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2007年03月19日(月) 02時04分

3月19日付・読売社説(1)読売新聞

 [悪質商法]「お年寄りを被害から守るには」

 高齢者などをだまし、高額な商品を売りつける悪質商法が激増している。被害防止策を急ぐ必要がある。

 人から勧められると、断れない。身近に相談できる人がいない——。不法な訪問販売や電話勧誘などで、悪質業者に狙われやすいのは、そんなお年寄りたちだ。

 国民生活センターによると、全国の消費者センターに寄せられた訪問販売の相談件数は、60歳以上が約5割を占める。不要な高額の呉服、羽毛布団などを続けて買わされる「次々販売」の相談も、60歳以上が年間約1万件と最も多い。

 高齢化が進む日本では、5人に1人が65歳以上だ。そのうち、1000万人以上が、独り暮らしか高齢者だけの世帯という。悪質業者はそこにつけ込む。

 しかし、行政機関が業者を処分した件数は、全体のごく一部にとどまる。

 訪問販売などを規制する特定商取引法(特商法)により、国や都道府県が、販売方法の改善を業者に指示したり、業務停止処分にした件数は、2005年度に全国で80件にすぎない。今年度も、昨年末時点で60件だ。

 うその説明をする「不実告知」などは実際には、年間数十万件の被害があるとも言われる。特商法は力不足と言わざるを得ない。悪質業者を見逃さず、すばやく処分できるように改めるべきだ。

 特商法は、規制の対象となる商品やサービスを政令で指定している。新たな手口が登場すると、規制対象に加え、指定する仕組みだが、業者は規制外の商品などを持ち出し、別の被害が広がる。

 指定制をやめ、すべての商品やサービスを対象にすべきだ。経済産業省は法改正の検討を急いでほしい。

 悪質業者が消費者をだまし、高額な商品を購入させる場合、クレジットカードで支払わせる例が多い。クレジット販売に関する割賦販売法の規制も、併せて強化する必要がある。

 クレジット会社に対し、カードの加盟業者の管理を義務付けてはどうか。自主的な監視で悪質業者を排除すれば、カードの信用も高まるだろう。

 国、国民生活センター、都道府県などが、消費者トラブルに対する連携を強化し、被害防止を図ることも課題だ。

 住宅リフォームの悪質商法では、警察が強制捜査に踏み切り、被害の拡大を食い止めた。ケースによっては、警察との協力が効果をもたらす。

 お年寄りたちの立場は弱い。大量退職時代を迎えた団塊世代も、被害者の“予備軍”だ。消費者を守る対策を強化しなければならない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070318ig90.htm