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2007年03月19日(月) 00時00分

湘南国際マラソン 笑顔あふれ「来年も」朝日新聞

  1万人を超えるランナー、大会を支えたボランティアたちの晴れやかな笑顔があふれた。「湘南国際マラソン」(神奈川陸上競技協会主催、朝日新聞社後援)は18日、多くの思い出を残して幕を閉じた。「来年も……」。そんな声が、あちこちで聞かれた。

  ■参加者の感想

  フルマラソンで初優勝を飾ったのは、旭化成の陸上部に以前所属していた高尾憲司さん(31)だった。表彰式で栄誉をたたえられ、「何とか優勝できた。第1回の大会で、ゼッケンが1番、結果も1位と、1が三つもそろってうれしい」と話した。

  一般男子を制したのは茨城県取手市の会社員荒井崇さん(36)。実業団の日清食品に所属していたこともあり、2時間15分台の記録もある。今回は、昨年始めたトライアスロンの練習の一環として走ったという。横浜市出身で大学も県内。「久しぶりの里帰りという感じで気持ちよかった」

  フルマラソンの女子優勝者、静岡県富士市の土屋直子さん(31)は、高橋尚子選手の金メダル獲得に感動して走り始めた。「ランナー同士励まし合って平和を感じた。できるだけペースが同じくらいの男子と走って引っ張ってもらおうと思っていた」という。

  完走150回目を目指した茅ケ崎市の会計事務所勤務武蔵靖夫さん(63)も、正味4時間46分ほどで走りきった。「富士山だけでなく丹沢、箱根も眺められ、海に伊豆大島まで見えた。年に何回もない。完走に成功しただけでうれしい」

  計測終了の午後2時40分直前に滑り込んだのは大阪市の派遣社員山口みきこさん(22)。フルマラソンに初めて挑んだという。「何かやり遂げた感じで気持ちよかった。でも2度と走りたくない。観光で来たい」と言った。

  10キロ車いすの部。優勝した大和市の橋爪淳さん(44)と、準優勝の横浜市保土ケ谷区の小林宏さん(42)は同タイムで、しかも「横浜ラ・ストラーダ」に所属する仲間だった。自己記録を更新した橋爪さんは「風が強いと思ったが、アップダウンが無くて走りやすかった」と話した。

  フルマラソン初挑戦だった横浜市港南区の立石かよさん(26)は、4時間半でゴールイン。「話のネタになると思って友達と参加しました。これからみんなで走った分食べます」と打ち上げが楽しみな様子だった。

  相模原市の高校1年生塩沢桜さん(16)は、親友の百瀬舞さん(16)と10キロを完走した。「途中で出されたバナナやパンがおいしかった。差し出された食べ物は全部食べました。来年も走りたい」と話していた。

(山本真男、佐藤正典)

  ■「潮風が心地よい」10キロの部記者挑戦

  「12641」のゼッケンをつけ、10キロの部を走った。ほてった体に、潮風が心地よかった。

  正午前、タイムを自動計測するためのチップをシューズのひもに取り付け、出発点へ向かった。スタート直後のコースは、さながらラッシュアワーの駅のよう。集団がばらけるまで、しばらく歩くしかなかった。

  3キロ手前までは、景色を楽しむ余裕もあったが、その後、足が重くなった。折り返し地点を過ぎるとフルマラソンの復路の走者と合流。40キロ近く走ってきて、自分と同じペースには驚いた。

  8キロ手前の給水所。コップを手に取ったが、うまく口に運べなかった。走りながら、かっこうよく水を飲むには修行が足りなかったようだ。

  観客に手を振りながら走る松沢成文知事を9キロ地点で追い抜き、ゴール直前の江の島大橋へ。「歩きたい」という邪念を振り払い、最後の力を振り絞った。

  ゴール頭上の時計は「58分」。目標の1時間を切ることができた。正直、「楽しい」と思った。来年も挑戦したい。

(小島寛明)

  ■「後続頑張れ」Qちゃんが激励

  10キロの部には、シドニー五輪の金メダリスト高橋尚子さん(34)、03年パリ世界陸上銅メダリストの千葉真子さん(30)、タレントの間寛平さん(57)も参加した。

  高橋さんはゴール後、来たルートを何度か引き返し、後続のランナーを励ました。「皆さんに元気と力をと思って走ったのに、私が元気をもらった。富士山や江の島、海が見えて本当にいいコースで感動した」と語り、いつもの「Qちゃん」スマイルを見せた。

(山田知英)

  ■大会支えたボランティア

  大イベントの舞台裏で、2千人余りのボランティアらが活躍した。

  茅ケ崎市柳島の給水地点。市内の赤間紀夫さん(72)はランナーにスポーツドリンクを渡した。「若い人と接する機会ができたし、差し出した水を受け取ってもらえるとうれしい」と言った。

  「地元でのイベントを盛り上げたい」と参加したのは、藤沢市の大学生畠山萌さん(19)。江の島内に設けられた荷物置き場で、警備と受け渡し作業に追われた。「荷物を探し出すのは大変だけど、笑顔で受け取ってもらえるのでやってよかった」と話していた。

  二宮町の西湘バイパスに設けられた折り返し地点。足を滑らせないよう路面にゴムの板が敷かれたが、中央分離帯の部分が少し盛り上がっていた。次々とやって来るランナーに向かい、ASA(朝日新聞販売所)大磯の後藤雄二さん(52)らボランティアや、神奈川陸上競技協会のメンバーが「段差に注意してください」と声を枯らした。

  コースとゴール会場に7カ所設けられた救護所では、消防署員のほか、医師など142人のボランティアが待機。競技中、転倒による打撲や脱水症状などで4人のランナーが救急車で搬送されたが、いずれも程度は軽かったという。

  平塚市の看護師、谷ヨシ子さん(68)は、新江ノ島水族館近くの第1コース救護所で待機した。「スポーツイベントが大好きで、長野五輪やサッカーW杯のときも手伝いに行った。今回は住んでいるところの近くだし、特に応援したかった」と話していた。

  マラソン会場やその周辺では、約500人の警察官と、約2千人のボランティアらが交通整理や雑踏警備にあたった。

  県警交通規制課によると、国道134号、新湘南バイパス、西湘バイパスの一部を通行止めにした関係で、国道1号などで一時1〜3キロ渋滞があった。しかし、ふだんの日曜日と比べて特段の混雑はなく、事故もなかったという。

  初めてのマラソンを終え、同課は「参加者の理解と協力のおかげです」とほっとしていた。

(杉浦幹治)

  □フルマラソンの上位入賞者は次の通り=大会本部発表。

  【男子】エリート (1)高尾憲司2時間22分19秒(2)福田孝之2時間31分57秒(3)上坂寛之2時間34分25秒▽一般 (1)荒井崇2時間25分19秒(2)中島忠実2時間30分19秒(3)三井僚2時間30分32秒

  【女子】エリート (1)土屋直子2時間44分04秒(2)山沢洋子2時間59分38秒(3)竹内恵子2時間59分44秒▽一般 (1)小川比登美3時間03分16秒(2)長岡美奈3時間10分14秒(3)絵野沢恵3時間11分41秒

http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000000703190002