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2007年03月19日(月) 00時00分

北朝鮮、暖冬引き金で凶作危機…農繁期に水不足?ZAKZAK

 「寒い時期なので、ずいぶん着込んで行った。使い捨てカイロも持っていたが、暖冬で必要はなかった」と語るのは、先ごろ訪朝した日朝関係筋。同筋は続けて、「平壌市民もガッチリ着込んでいる人はいなかった。コートの前を閉めていなくても十分、過ごせる。天気がよく、雪も降ることはなかった。地方都市で食事をしたが、食堂のオンドル(床暖房)が暑いぐらいだった」と証言する。

 平壌は盛岡とほぼ同じ緯度で1月の平均気温は零下7.8度。だが、本来まだ寒いはずの3月に入っても最低気温は零下1度、最高気温は10度を超える日が続いていて「体感温度は東京とそんなに変わらなかった」(関係筋)というから驚きだ。


厳冬の平壌では外を歩く市民もまばらだが、今年は暖冬の影響で一変していた。市民は手袋もせず、“重装備”でもなかった。通りにこれほどの人々が行き交うのは極めて珍しいという=今年2月(北朝鮮取材班) この時期、平壌市内を流れる大同江(テドンガン)は氷結する。「主体(チュチェ)思想塔から対岸の金日成(キムイルソン)広場まで歩いて渡れる年もあるそうだが、今年は半分も凍っていない感じだった。地方では氷上でソリ遊びをする子供や氷に穴を開けて釣りをする人の姿をよく見たが、地元の人は『あまりに氷が薄いので落ちそうで危ない』と言っていた」(同)というほどだ。

 また、「外国人に対して出される食事も以前は足りないということもあったが、今回は食べきれないぐらいあった」。特別扱いの外国人と北朝鮮国民の食卓を対比することはできないが、関係筋の話からは切迫感は感じられない。

 昨年の初夏に発生し、約1万人の死者・行方不明者が出たと推計されている大水害で食糧難に陥ったとされる北。世界食糧計画(WFP)は昨年10月、「穀物は1月に底を突く」と予想。北の官製メディアも90年代半ばに発生し、200万人が餓死した時代を示す「苦難の行軍」の単語を使い、事実上、国民へ辛抱を呼びかけていた。

 暖冬で凍死者は減少した可能性もあるが、北の生活事情に詳しい山梨学院大学経営情報学部の宮塚利雄教授は「平壌の食糧事情がよいのは普通。暖冬といえども、地方はどうなっているかわからない。食糧事情が悪いのは間違いないが、最近、中国から大量のコメを買ったという情報がある」と語る。

 その上で、「北朝鮮の人はあいさつ代わりに『冬に雪が降る年は豊作だ』と口にする。暖冬だと、農繁期の水不足が深刻になり、不作となる可能性が高い。すでに韓国へ肥料援助要請をしているところからしても推して知るべしでしょう」と語る。

 来月15日には昨年、水害で中止となったマスゲーム公演「アリラン」が開催され、北は外貨獲得を狙う。運良く暖冬となった今年だが、それが凶と出るか吉と出るかはわからない。

ZAKZAK 2007/03/19

http://www.zakzak.co.jp/top/2007_03/t2007031922.html