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2007年03月19日(月) 06時55分

がん広げる「案内人」は免疫細胞 京大グループ発見朝日新聞

 がん細胞がまわりにじわじわと広がっていく「浸潤」現象を起こすカギとなるのは、「未分化骨髄球」という免疫系の細胞であることを、京都大大学院の武藤(たけとう)誠教授(遺伝薬理学)と湊長博教授(免疫学)らのグループが見つけ、18日付の米科学誌「ネイチャー・ジェネティクス」電子版に発表する。がんを攻撃する「味方」と思われていた免疫系の細胞が、がんと協力する「敵」だったことになり、がん治療の考え方を変えかねない発見といえそうだ。

 武藤教授らは遺伝子操作で大腸がんを起こすネズミを開発し、観察する中で、がん細胞を包むようにくっついている細胞群に気が付いた。

 調べると、骨髄にだけあるとされていた「未分化骨髄球」という未熟な免疫系細胞だった。この細胞群はたんぱく質分解酵素を作り、がん細胞の固まりを包んでいる膜を溶かし、がん細胞が外へ広がっていきやすくしていることがわかった。

 さらに大腸がんの細胞表面に免疫系細胞を呼び寄せる働きを持つたんぱく質があることを発見。これを認識してくっつくCCR1というたんぱく質を未分化骨髄球が持っていることもわかった。

 大腸がんを起こすネズミに、このCCR1ができなくなるようにさらに遺伝子操作すると、がん細胞のまわりに未分化骨髄球は集まらず、浸潤の程度も低くなった。

 湊教授は「免疫系細胞ががんの周辺に集まることは知られていたが、それはがんを攻撃するためと考えられていた。しかし、実は、がん細胞に呼び寄せられ、がん細胞がまわりに広がっていく浸潤現象の『水先案内人』のような役割をしていた」と話す。

http://www.asahi.com/life/update/0319/001.html