記事登録
2007年03月18日(日) 13時25分

通信と放送、融合へ加速 「見逃し視聴」をねらえ朝日新聞

 ニッポン放送株買収を巡るライブドアとフジテレビの攻防、楽天によるTBSへの統合提案で注目を集めた「通信と放送の融合」。新興ネット企業が狙ったメディア支配は思惑通りに進まず、動きは一見下火になったかに見える。だが、ブロードバンド(高速大容量通信)の普及と動画配信技術の進歩を背景に、NTTが映像配信の強化に乗り出すなど、融合に向けた現実は急速に進みつつある。

通信と放送の融合のイメージ

 東京・大手町のオフィス街の一角。NTTの次世代通信網「NGN」を紹介するショールームで1月、実証実験が始まった。大画面の薄型テレビに映る番組の映像は、地上波経由ではない。地上デジタル放送のテレビ番組を、IP(インターネット・プロトコル)網を使って本放送と同時に再送信している。通信と放送を隔てる壁に、風穴を開ける国内初の試みだ。

 「いよいよNTTの期待通りのシナリオが動き出したか」。地上波の同時再送信で先行するケーブルテレビ(CATV)業界からは警戒の声が出る。地デジの難視聴対策に生かす目的で始まった実験だが、将来は通信事業者が放送ビジネスに本格参入する道を開く技術、とみているからだ。

 実験を担うNTTコミュニケーションズの幹部は強調する。「放送がデジタル化され、映像情報を圧縮して通信網に乗せられるようになると、通信と放送の区分は消滅していく。この流れが逆戻りすることはない」

 政府の「融合」促進策も追い風だ。昨年末の著作権法改正で、地上波と同じ番組をIP網で同時に流す際の煩雑な権利処理手続きも、CATV並みに簡素化された。光回線の普及も進み、66%のシェア(昨年9月末)を握るNTTは、その強みを生かすことを狙う。

     ◇

 欧米諸国での動きはさらに先を行く。

 「新しいメディアと既存メディアの間にもはやギャップは存在しない」

 米国で1月に開かれた世界最大の家電見本市、コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)では、米4大テレビネットの一角CBSのレスリー・ムーンベス最高経営責任者(CEO)の講演が関心を集めた。動画投稿サイト「ユーチューブ」などあらゆるメディアを使い、本放送を見てもらう話題づくりをすると宣言したからだ。

 ネット上の映像配信に防衛的だった米4大ネットは昨年、大きくかじを切った。自社サイトで放映後の番組を無料配信する「見逃し視聴」サービスを各社が開始。米CATVの大手タイムワーナー・ケーブルも、番組放映中なら、いつでも番組の冒頭から見直せるサービスを提供する。

 イタリアで光通信サービスを提供する新興企業、ファストウェブは地上波のIP再送信を手がけ、公共放送RAIなどの番組を3日前までさかのぼって見られる「見逃し視聴」などで加入者を伸ばしている。

http://www.asahi.com/culture/update/0318/008.html