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2007年03月18日(日) 13時01分

あくせす香川:ヤミ金被害者が批判「悪質貸金業者を行政は放置」 /香川毎日新聞

 ◇知事登録業者が関与し県に指導要請「立証困難」
 今年1月、顧客をヤミ金にあっせんしていた貸金業者が、出資法違反(高金利)の疑いで県警に摘発された。それまでに複数の被害者が、この業者を監督する県に対し、何度も指導を要請してきた。だが、実質廃業した現在も県知事登録は残ったままで、「行政は悪質業者を野放しにしてきた」と批判の声も上がる。なぜ長期間、違法業者がはびこることになったのか、検証した。【大久保昂】
 ◇「あっせん」に処分、罰則なし 法の抜け穴
 今回逮捕、起訴された高橋裕司被告(27)=高松市仏生山町=ら2人の起訴事実は、同市の男性ら4人に貸し付けを行った際、法定の金利制限(1日当たり0・08%)を超える利息を受け取ったというもの。
 同被告は03年12月、貸金業者「ひまわり」として県知事登録を受けた。その後「WAVE」、「e—ファイナンス」と名前を変えた。県警の調べで、知事登録を呼び水に、電話を掛けてきた顧客を自身が関与するヤミ金業者に紹介していたことが分かっている。
 被害者の1人で、高松市の男性(38)はこう証言する。昨年1月に「WAVE」に紹介されたヤミ金業者「ピープル」から、トイチ(10日で1割)の利息での取り立てを繰り返し受けたため、同年6月29日、県経営支援課に対し、既に「e—ファイナンス」に名前を変えていたこの業者を業務停止にするよう要請した。同月中旬に相談した際には、県側から「実名を出してくれないと指導しづらい」と言われていた。そこで、名前を明かし、「e—ファイナンス」とのやり取りを収めた録音テープも提出した。だが、約3カ月後に県から聞いたのは「『WAVE』の看板を『e—ファイナンス』に変えるよう指導した」ということだけだったという。「勇気を出して実名を出したのに、これでは何もしてくれなかったのも同じだ」と憤る。
 同課は「紹介行為を行わないよう口頭で指導を行ってきた」と釈明する。ただ、業者が“否認”するなどして事実確認ができず、処分はできなかったという。「『知らない』と言われるとそれ以上追及ができない。我々が違法行為を立証するのは難しい」と打ち明ける。
 摘発から2カ月近くが経過した今月、「e—ファイナンス」が看板などに掲載していたフリーダイヤルに掛けてみた。すると、電話に出た男からは「廃業した」という答え。だが、廃業していても県知事登録は今も残る。
 金融庁は「悪質な出資法違反であれば、貸金業規制法に従って逮捕段階で業務停止などの処分を行うことは可能」という見解を示した。しかし、同課は「有罪判決を事実確認ととらえ、逮捕時点では処分しない」としており、関係者からは「なぜ逮捕された悪質業者にお墨付きを与えるのか」と疑問の声も聞かれる。
 全国ヤミ金融対策会議代表幹事の宇都宮健児弁護士(東京弁護士会)は「知事登録業者がヤミ金と一体になって顧客をあっせんする手口は全国各地で増えているパターン。あっせん業務に対する処分・罰則規定がない現行法の抜け穴で、対策が必要」と指摘している。

3月18日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070318-00000189-mailo-l37