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2007年03月18日(日) 18時39分

月面反射で無線通信、アマ愛好家らの夢実現 茨城の施設朝日新聞

 月に電波を反射させてアマチュア無線家らが交信する月面反射通信が、16日に閉局式のあったKDDI茨城衛星通信センター(茨城県高萩市)で行われている。32メートルのパラボラアンテナに手作りの機材を持ち込んで特別局を開局。世界的に珍しい方法で、地球の裏側とも明瞭(めいりょう)な信号の交信に成功した。24日の週末にも交信する予定だ。

月面反射通信に使われている32メートルパラボラアンテナ=茨城県高萩市のKDDI茨城衛星通信センター、日本アマチュア無線連盟提供

 月面反射通信では、出した電波が交信相手に届き、そこから応答が戻るまでに、5秒もかかる。

 月面で反射する電波は7%程度。戻る電波も、1兆分の1のさらに1兆分の1以下の強さしかないという。地上の工場や自動車、宇宙空間の雑音も邪魔になる。電波を捕まえても、風呂場の会話のような残響があって、意味のある交信をするのは難しい。

 同センターは、日本初のテレビ衛星中継の基地。63年の運用実験開始3日後、「ケネディ大統領暗殺」のニュース映像が飛び込み、日本中に発信した。閉局は国際電話や映像送信に使う衛星通信を山口衛星通信センターに集約するため。うわさを聞いたアマチュア無線家がKDDIと交渉して実現した。

 月の追尾や機材の積み込みについて協議し、2月に突貫の改造工事をした。同月23日、試験電波を出した。電波が月と往復するのに2.5秒。その微妙な時間の後、はっきりした信号が返ってくると歓声が上がった。特別局「8N1EME」の免許が交付され、さっそく世界に向けて交信を呼びかけた。オーストラリアやオランダなどの計13局から応答があった。

 月面反射通信は、第2次世界大戦後に米軍が手がけた。だが月が上空にある半日しか使えず、通常は利用されていない。同センターのパラボラは大出力の送信機や感度のいいアンテナを兼ねるので、相手の無線局は普通のアマチュア無線の設備でも十分だ。プロジェクトの代表を務める渡辺美千明さん(50)は「完成度の高い設備を使うことができ、夢のようだ」と話している。

http://www.asahi.com/national/update/0317/TKY200703170100.html