記事登録
2007年03月18日(日) 15時52分

奈良県の7町長、公費で温泉旅行 今年は視察先が休み朝日新聞

 奈良県西部にある7町の町長が、「町長会」の名目でほぼ毎年、公費で親善旅行をしていることがわかった。今年度は2月に1泊2日の日程で、約90万円で北陸を旅行。当初予定していた防災センターの視察を休館日だったため取りやめ、高級旅館で懇親会を開いた。うち2町が、財政破綻(はたん)した北海道夕張市を「対岸の火事」と片づけられない赤字団体。町長らは「大切な議論の場」と主張するが、誤解を招くとして私費で旅行代金を返還した。

西和7町

  

 7町は安堵(あんど)、斑鳩(いかるが)、王寺(おうじ)、上牧(かんまき)、河合(かわい)、三郷(さんごう)、平群(へぐり)の西和(せいわ)地区の各町。旅行は7町でつくる「王寺周辺広域市町村圏協議会」の主催。今年度事務局の三郷町によると、7町長と同町職員2人の計9人が2月19、20日に旅行した。

 当初は福井市の市防災センターを視察した後、和倉温泉(石川県七尾市)にある高級旅館に宿泊する予定だったが、計画を立てた後、視察日がセンター休館日だったことがわかり、旅館に直行した。

 参加したある町長によると、旅館で懇談した後、コンパニオン数人を呼んで宴会を開いたという。旅館は雑誌などに「もう一度行きたい旅館」としてたびたび登場する有名旅館で、通常の宿代は1泊2食付きで3万円を超す。

 事務局担当者は「7町長の日程を合わせるのに気を取られ、センターの休館日を確認していなかった。直前に気づいたため、日程変更は無理だった」と釈明する。

 同協議会は70年に設立。7町が人口や財政状況に応じて負担金を支出。05年度の運営費は計約700万円だった。

 設立以来ほぼ年1回、親善旅行を実施。04年2月は2泊3日で北海道・登別温泉や小樽市などを巡った。06年3月は福岡県を訪れたという。

 今年度、協議会長の秋田新平・三郷町長は「民間の優れた旅館サービスを実際に受けることで、行政運営の面で勉強になった。視察より議論と懇親が主な目的。7町は、消防や救急活動などで協力することも多く、腹を割って話すよい機会になっている」と話す。

 ただ、今年度の北陸旅行については「町民にただの温泉旅行という誤解を与えてしまう」として、7町長らは今月16日、旅費を同協議会に全額返納した。05年度以前の旅行については「視察も兼ねており、問題ない」としている。

 7町は03年、「西和市」の誕生を目指して合併協議会を設立したが、住民の反対などで決裂した。大阪市内までJRや近鉄で30分〜1時間程度という利便性から住宅開発が進み、大阪府へ通勤する「奈良府民」が増えた。世界遺産・法隆寺(斑鳩町)など観光資源も豊富だが、合併失敗の影響もあり、7町の財政状況はいずれも厳しい。

 上牧、平群両町は、今年度の赤字比率が約10%になる見込み。20%以上になれば、夕張市のように国の管理下に置かれる財政再建団体に転落する。

http://www.asahi.com/national/update/0317/OSK200703170098.html