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2007年03月17日(土) 00時00分

存続の願い託す票朝日新聞

 4月の区長選を前に、二つの公園問題で文京区が揺れている。
 区が総合体育館の移設を計画する元町公園(本郷1丁目)。関東大震災7年後の1930年に開園。震災を教訓に東京市(当時)が避難場所などとして造った震災復興小公園52カ所中唯一、原形をとどめる。

 近くにキャンパスがある東京大研究員の鹿野陽子さんは昨春、区の説明会に出たのを機に、問題にかかわりだした。

 区は当初、元町公園を廃止して体育館が入った建物を建て、隣接する旧元町小学校を公園にする構想を立てた。建物建設に民間資金を導入し、区の財政負担を抑える狙いもあった。

 鹿野さんは、公園も旧小学校も今のまま残そうと昨年6月、仲間と「ぱぱっと会議@元町公園」を立ち上げた。思いついたことをぱぱっとやるのが身上だ。

 公園での七夕の集いや旧小学校でのシンポジウム、元町公園かるたの作成……。活動を続けるうち、近隣住民や、造園、建築などの学会、建物に関心を持つ市民団体、大学生など様々な人が加わり、関心が広がった。

 区は反対の声を受け、歴史的な価値からカスケード(水の階段)など特徴的な施設がある公園南側は残し、北側に建物を建てる計画に改めた。

 しかし、区都市計画審議会は昨年12月、判断を保留し、「景観審議会や文化財保護審議会にも意見を聴くべきだ」と区に慎重な対応を求めた。

 区は「体育館は災害時に避難所になり、防災機能は高まる」とアピールする。だが、鹿野さんは「区は『空いている土地なんだから使えばいい』と、公園を区の施策の道具としてしか見ていないようだ」と指摘する。鹿野さんの目に、それはもう一つの公園問題にも共通するものと映る。

 新大塚公園(大塚1丁目)は当初、区立第五、第七両中学校の統合校用地として、廃止が計画された。

 05年秋に計画が明らかになると、近くの住民らが計画変更を求める運動を始めた。煙山力区長あての要望提出や議会への請願を重ね、反対署名は1万8千人を超えた。

 09年度に統合校開校の目標を控えた区は昨年11月、統合校は隣接する教育センター跡地に建てることとし、公園の一部だけを統合校のグラウンドと兼用にする方針に転換した。だが、反対の声が消えたわけではない。

 少年野球チームが使うグラウンドや散歩に適した並木がある公園は、周辺住民の憩いの場だ。「兼用といっても授業の間は学校専用。ゆくゆくは全体が学校用地になるのでは」。「守る会」代表の岡野薫さん(71)はそう心配する。

 煙山区長引退の後を受けた4月の区長選には、今のところ区議会議長の成沢広修さん(41)と区議の鹿倉泰祐さん(49)が立つ予定だ。

 成沢さんは、元町公園について「(公園の位置を変える)都市計画決定を急ぐべきでない」、新大塚公園については「区の方針通り進めるが、公園の使い勝手の良い方法を考えていきたい」との考え。一方、鹿倉さんは「総合体育館は現在地(湯島4丁目)で改築、五中と七中の統合は再検討し、元町公園と新大塚公園を守る」とする。

 鹿野さんは言う。「区長選では、ポーズで見直しを言うのではなく、行動してくれる人を応援したい」。鹿倉さんを支援することを決めている岡野さんは「あとは区長選しかない。投票日が早く来てほしい」と力を込めた。(片山健志)

http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000000703190001