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2007年03月17日(土) 06時27分

動脈瘤肥大を抑える物質 阪大、ネズミで効果確認朝日新聞

 腹部や胸部の大動脈がこぶのように膨らむ大動脈瘤(りゅう)は、破裂すると突然死する恐れが高い。その大動脈瘤が大きくなるのをとどめる物質を、大阪大の三宅隆医師や森下竜一教授(ともに遺伝子治療学)らが開発し、ネズミで効果を確認した。小さいままにできれば破裂の恐れが低くなる。脳動脈瘤などへの応用も考えられ、森下さんは「患者の不安が和らぐ。安全性を確かめ臨床応用につなげたい」という。

腹部大動脈瘤が大きくなるのをとどめる仕組みのイメージ

 動脈瘤は、加齢や動脈硬化に伴って、炎症が起きたり組織が壊れたりして血管の壁がもろくなった動脈が、血圧の影響で膨らんで起きる。

 炎症や組織の破壊は、それぞれ誘因物質が知られている。森下さんらは誘因物質を直接壊したりするのではなく、誘因物質が働きかける核酸とよく似た「おとり核酸」を合成し、動脈瘤の近くに入れる戦略をとった。誘因物質の大半が「おとり」に引っかかって、炎症や組織の破壊が進まなくなると考えた。

 腹部大動脈瘤を発症させたネズミで実験したところ、「おとり核酸」を大動脈近くの腹腔(ふくくう)内に注入した場合のこぶの断面積は、1週間後で平均3平方ミリ(注入しなかったネズミでは5平方ミリ)、2週間後で6平方ミリ(同13平方ミリ)と膨らみ具合が抑えられ、4週間後も維持された。

 近年、健康診断で直径3センチ前後の小さな腹部大動脈瘤が見つかるケースが増えている。治療に危険を伴うこともあり、破裂の恐れが高まる5〜6センチになるまで待ってから手術やステントという器具で治療することが多い。その間、患者は不安と隣り合わせになる。

 胸部大動脈瘤や脳動脈瘤などへの応用をにらみ、静脈内に注入できるよう「おとり核酸」の微小粒子化に取り組んでいるほか、薄膜状や寒天状にして細い管(カテーテル)で患部に入れることも検討している。

 成果は17日、神戸市で開催中の日本循環器学会で発表される。

http://www.asahi.com/life/update/0317/004.html