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2007年03月16日(金) 00時00分

獣医師へ65歳近づいた朝日新聞

  相模原市の麻布大学(政岡俊夫学長)で15日、卒業式があり、獣医学部獣医学科の143人の卒業生のなかに、横須賀市在住の中島公雄さん(65)の姿があった。子どものころから抱いていた獣医師への夢が捨てきれず、定年後に学科を受験した。難関を突破後、6年間、若い学生と一緒に勉学に励んできた。卒業証書を受けた中島さんは感無量の様子だった。

(小川太一郎)

  若いころから、動物好きで、将来、獣医師になると決めていた。18歳で麻布大の獣医学科に入学したが、2年の時、父親が他界し、経済的理由から退学した。その後は、臨床検査技師として生計を立ててきたが、定年の半年前に、心にいつもあった獣医師への思いが再燃した。

  妻の磯子さん(62)に「定年を機に獣医師に挑戦したい」と打ち明けると、「やりなさい。応援する」。その一言で再挑戦を決めた。3女が父親の影響を受け、獣医師になった。3カ月の猛勉強の結果、入学試験に合格。60歳の1年生が誕生した。

  入学後は6年間、「無遅刻、無欠席、無早退、最前列での受講」で通した。在学中は、親子ほども違う若い同級生にも、親しまれ人気者だったという。大学側はこの努力をたたえて、中島さんに初めてとなる学長特別賞を授与した。式で特別賞の受賞の際には、会場からは盛んな拍手が起きた。

  式後、中島さんは「苦言をひとことも言わず支えてくれた妻に、まず感謝したい」と、声をつまらせた。卒業後は、獣医師国家試験に合格できれば獣医師として出発する。「先輩、後輩、教職員にも恵まれて、とても充実した6年間だった。飼い主さんの気持ちを受けとめられる獣医師になりたい」と話す。

http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000000703160003