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2007年03月15日(木) 12時31分

原発制御棒はずれ一時臨界に 北陸電力、国に報告せず朝日新聞

 北陸電力の志賀原発1号機(石川県志賀町、沸騰水型、出力54万キロワット)で、99年の定期検査中に、挿入されていた制御棒3本が想定外に外れ、停止していた原子炉が一時、核分裂が続く臨界状態になっていたことが15日わかった。すぐ緊急停止信号が出たが制御棒は元に戻らず、臨界状態は制御棒が戻るまで15分ほど続いた。その間、原子炉の制御ができなかったことになる。北陸電力はこうした事実を国に報告していなかった。

 経済産業省原子力安全・保安院は「3本の制御棒が外れた想定外の臨界事故と認識している。極めて重大だ」とし、法令違反の疑いもあったとみて同日午後、同社に同1号機の運転停止を命じるとともに、事実関係を調べて報告するよう法令に基づいて指示する。

 北陸電力によると、トラブルは99年6月18日午前2時すぎに起きた。定期検査中で原子炉は上ぶたが開いた状態で停止していた。89本ある制御棒はすべて炉の下から挿入された状態になっていたが、そのうちの3本が制御弁の操作ミスで下に落ちてしまい、核反応が始まって臨界状態になった。この時の出力は1%未満だったとしている。

 すぐ、核分裂を起こす中性子の量が多いという警報が出たが、安全装置が正常に作動せず、制御棒は元に戻らなかった。その後、作業員らが手動で弁を操作するなどして約15分後に制御棒が元の挿入状態に戻った。

 作業員らの被曝(ひばく)などはなかったが、同社は当時、発電所長の判断でこうした事実を国へ報告していなかった。昨秋以降、電力会社のデータ改ざんが相次いだことを受け、国の指示で進めた総点検の中で、作業員への聞き取り調査などから事実が浮上したという。

 保安院の市村知也・原子力事故故障対策室長は会見で、「最近明らかになった東北電力や東京電力の事例よりも悪質な可能性がある」と事態を重視している姿勢を改めて明らかにした。

 会見では、同原発の安全審査では、制御棒の引き抜きトラブルは1本までしか想定されていないと説明された。また、当時、中央制御室を含めて複数人の作業者が関係していた可能性が高い。業務日誌など所内で次の運転グループに引き継がれた明確な証拠は残っていないという。

http://www.asahi.com/national/update/0315/TKY200703150136.html