【理由も不可解】
東証は12日、西室泰三社長が記者会見し、上場維持の理由について次のような説明をした。
「不適切な会計処理に複数の(日興)当事者がかかわったことは否定できない。が、(不正が)組織的に行われた確証は得られなかった。グレーであるからダメ(上場廃止)とはいえない」
この“ヘリクツ”を聞いた外資系金融機関幹部は「東証は自らの手でマーケットの規律をゆがめてしまった。世界の中でこれほど信用がおけないマーケットはない」と吐き捨てた。
不正会計問題が発覚した日興は、社内に弁護士らからなる特別調査委員会を立ち上げ、「不正は組織的だった」との結論を発表した。日興が自浄力を発揮しようと、可能なかぎり調査した末に導き出されたものが「組織的だった」なのに、東証は「組織的といえない」として上場維持を決定してしまったのだ。
多くの市場関係者が東証の説明に疑問を感じるのは当たり前だろう。
また、報道機関も取材の過程で、「上場廃止は間違いない」との判断に傾き、廃止に向けた原稿を馬に食わせるほど用意していた。「そのため、兜クラブ(東証や証券会社を持ち場にする記者クラブ)に所属する担当記者は想定外の結論に、それまで書きためた原稿がすべて使えなくなってしまい、泣いていた」(大手報道機関の担当記者)という。
【有力政治家】
東証が誰がみてもおかしいと感じるような結論を出してきたのは、なぜなのか。
永田町内では次のような情報がまことしやかに流れている。
「外資系金融機関であるシティに、3大証券の一角である日興を買いたたかれたくない有力政治家らが東証に上場維持を強く働きかけたようだ。東証も自らの上場問題があるので、強く拒絶できなかったのだろう」(永田町有力筋)
東証は当初、2006年春の上場を目指していたが、市場での取引や上場会社を監視する「自主規制機能」をどのように機能させるかで金融当局と激突してしまい、時期がずれ込んでいるという経緯がある。自らの上場が“悲願”でもある東証は「政治力に弱いという一面がある」(同)。
また、市場でも同様の情報が“真実味”を持って流れている。
「東証に対して、相当な政治的プレッシャーがかけられたと聞く。プレッシャーをかけた人物として浮上しているのは、永田町で流れているのと同じ有力政治家だ。東証が自ら市場の規律をゆがめてしまったことは、大きな過ちだ。結局、日興に対してTOB(株式公開買い付け)を表明していたシティグループが貧乏くじを引くことになってしまった」(市場筋)という。
世界同時株安の激震から立ち直り始めている東証に、不可解な上場維持という新たな“火ダネ”がくすぶり始めているようだ。
ZAKZAK 2007/03/13