記事登録
2007年03月13日(火) 01時51分

日興上場を維持…東証「不正会計、悪質性高くない」と読売新聞


日興コーディアルグループ株の上場維持を発表し、会見後に質問に答える東証の西室泰三社長

 東京証券取引所は12日、不正会計問題を受けて上場廃止の是非を検討していた日興コーディアルグループの株式(東証1部)について、上場を維持すると発表した。

 当初は上場廃止する方向で調整していたが、カネボウや西武鉄道など過去の上場廃止の例と比較し、廃止が必要なほど悪質性はないと最終的に判断した。

 日興は米金融大手シティグループの傘下入りを決め、シティはすでに日興株のTOB(株式公開買い付け)を行う方針を表明している。上場維持で、日興株が上昇する可能性もあり、TOBの成否やシティと日興の包括提携の行方に影響しそうだ。

 東証は上場維持の決定と同時に、過去の有価証券報告書の訂正など「情報開示の姿勢に改善の必要性が高い」として、日興に注意を勧告し、26日までに改善報告書を提出するよう求めた。日興は、不適切な情報開示などで、今後5年以内にあと2回、東証から改善報告書の提出を求められると、上場廃止となる。

 日興は、投資子会社「日興プリンシパル・インベストメンツ」(NPI)を舞台に利益を不正に水増しして、2005年3月期と06年3月期の有価証券報告書を訂正した。これを受けて東証は、日興の有価証券報告書の虚偽記載が、上場廃止基準に該当するかどうか検討してきた。

 東証は、〈1〉日興が組織的に関与していたとの確証が得られなかった〈2〉赤字を黒字にするような粉飾決算ではなく、利益の水増し額が多額ではない〈3〉過去の例に照らしても上場廃止するほどではない——などとして上場の維持を決定した。

 12日に記者会見した東証の西室泰三社長は「日興全体として組織的、意図的と言えるまで至らなかった。投資家が損害を被ることはなかった」などと説明した。

 東証は上場廃止の恐れを投資家に知らせる監理ポストから13日付で日興株を外す。大阪証券取引所と名古屋証券取引所も12日、日興株の上場維持を発表した。

 過去に東証が上場を廃止した企業との比較では、5年間で総額2000億円を超える粉飾決算をしたカネボウや、大株主の持ち株比率を47年にわたって有価証券報告書に虚偽記載していた西武鉄道などに比べて、日興は経常利益の水増し額が2年間で約400億円で悪質性が低いと判断した。

 日興が決めている米金融大手シティの傘下入りについて、日興の桑島正治社長は「包括提携の方針に変わりはない」とした。

 日興は、水増しされた利益に基づいて社債を発行していたとして、06年12月に証券取引等監視委員会の勧告を受けた。その後、金融庁の命令を受けて史上最高額となる5億円の課徴金を納めている。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20070312it11.htm