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2007年03月13日(火) 00時00分

湘南の映画の灯また消えゆく朝日新聞

  昭和初期から藤沢市内で映画館を経営してきた湘南オデヲン(本社・藤沢市南藤沢)が72年の歴史に幕を閉じる。12日、今月いっぱいで計4スクリーンある二つの映画館を閉館すると発表した。映画館がある藤沢駅北口と南口のビルはともに売却して、建設時の負債返済などにあてる。同社は独立館として個性あるプログラムを組み、地元の店とタイアップしたイベントもしてきた。長年のファンからは「文化がなくなる」と惜しむ声も上がっている。

(山本真男)

  取締役の松川惠子・統括部長らによると、スクリーンが2カ所に分かれているため経費がかさんでいた。興行収入が少しずつ落ちる中で、オーナーでもある野内弘子社長の健康問題もあり、閉館を決めた。会社は存続するが、事実上、事業はなくなるため約40人の職員は退職する見通しだという。

  同社は1935年12月、藤沢オデヲン座として出発した。藤沢市内に別の映画館、鎌倉市内に大船館をそれぞれ開いたほか、茅ケ崎市や平塚市でも映画館を経営したことがあった。

  85年に藤沢駅南口に地上8階地下1階、床面積3129平方メートルのビル、89年には北口に同じ階数で床面積3762平方メートルのビルをそれぞれ建設した。それぞれ2スクリーンで客席は157〜264席。一部のフロアはマンションやパチンコ店として賃貸している。

  市外の映画館は93年の大船館を最後にすべて閉じた。そのころの年間客数は約30万人、興行収入が約4億円だった。茅ケ崎市内にたくさんのスクリーンを備えたシネマ・コンプレックス(シネコン)ができたこともあり、客数が次第に減少した。昨年は約24万人で、売り上げは約2億8千万円だったという。

  慶応大学映画研究部の短編映画祭(02、03年)▽カクテルやパンケーキ販売つきのシネマフェスティバル(04年)▽ダンスショーつきのフラダンス映画初日上映(06年)など、さまざまな企画をしてきた。大手の封切り作品の合間には単館上映の作品も交えてきた。

  上映作を決めるため、東京の試写会を10年以上も回ってきた松川さんは「地域に密着した、観客の顔が見える映画館として生き残る形をつくりたかった」と残念がる。売店収入が少ないことも不利だったという。

  藤沢市内の勤め先からの帰りに利用してきた町田市の藤川裕さん(56)は20年以上も通った長年のファン。「ときどきある単館上映がよかった。だんだん文化がなくなっていくようで本当に寂しい」と話した。

http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000000703130002