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2007年03月13日(火) 00時00分

戦争体験つなぐ冊子 子らつむぐ朝日新聞

  横浜市金沢区の市立瀬ケ崎小学校の6年生92人が、地域に住む22人のお年寄りから、それぞれの戦争体験をインタビューし、1冊の冊子にまとめた。「つなぐ つむぐ 戦争体験談集」。生活環境や学校生活、空襲、戦争への思いが話し言葉で淡々と記され、戦争当時の地域の様子がリアルに再現されている。

(佐藤善一)

  地域の戦争体験を掘り起こし、お年寄りとの結びつきを深めようと、昨年秋から総合学習の時間を使って取り組んだ。戦争当時の歴史について調べた後、5、6人が一つのグループとなって、地域に住むお年寄りを訪ね、体験談を聞いた。冊子は約200ページで、体験談のほか、子どもたちの感想もまとめた。200冊制作した。

  60年以上前の記憶のため、人によっては不確かな部分もあり、児童たちは根気よくお年寄りのもとを訪ね、メモをとりながら話を聞き続けた。4回以上、インタビューをしたグループもあった。写真を撮り、聞いた話を文章にまとめた。

  終戦当時17歳だった田島稔泰さん(78)の記事には「横浜大空襲のあった日、道路も火で熱せられて靴で歩くと靴が溶けてしまうぐらいでした。川には水を求めてきた人達の死体がたくさん浮いていました」と書かれている。

  相川健さん(76)は空襲について「機銃掃射をされて道路に弾が当たると、『プシュッ、プシュッ、プシュッ』という音がしました。市内の道路や川には死体がいっぱい転がっていました」。畠山喜久子さん(73)は食生活について「おやつやお昼はカボチャばっかりでした。芋類をご飯に混ぜていました。昔のサツマイモはべちゃべちゃしていてまずかったです」と語っていた。

  12日は同小体育館にお年寄りを招き、祝いの会が開かれた。参加したお年寄りたちは「平和な時代に生まれて本当に幸せです。二度と戦争を起こさないように頑張ってください」「戦争は人を人殺しにします」「子どもや孫に囲まれて生活しているのが夢のよう。戦争を起こさない国にしてください」と呼びかけていた。

  ■児童の感想■

  生々しい戦争体験を聞く体験は児童たちにとっても驚きと衝撃の連続だったようだ。

  田辺梨菜さんは「『戦争は嫌だ』と意見を言っただけで警察に殴られる。軍隊に入って亡くなったら『あなたの家族は死にました』だけで、骨も無くて髪の毛しか残っていないこともあったそうだ。体験を聞いて本当の戦争が分かった」。

  菊地原祐介君は「戦争を昔のことと軽く見ていたけれど、本ではない本当の『声』を聞いて『戦争をしてはいけない』という気持ちがよく伝わってきた。この悲しみを次へ次へ伝えていかなければいけないと思った」。

  高木めぐみさんは「戦争の本当のつらさは、戦争を体験した人にしか分からないと思う。でも私は体験した方の表情を見ながら話を聞くことができた。心をはだで感じることができた。戦争は、知ることから、止めることが始まると思う」。

  塚野遼君は「栄養失調で死んでしまうことなど、今の日本では考えられない。地獄のような様子をとてもこわく感じた。戦争を体験した人のことを考えるとつらくなった。分かったことは、戦争は『百害あって一利なし』です」。

  吉野渚さんは「戦争の傷あとは今でも生々しく残っています。私が戦争で親が死んでしまったら悲しくて自分も死にたくなると思います。どんどん人々を殺し、人をジワジワと苦しめていく戦争がとても嫌いです」。

  

http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000000703130004