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2007年03月13日(火) 00時00分

中国人強制連行訴訟 注目控訴審判決朝日新聞

 戦時中に中国から強制連行され、石炭の積み下ろしなどの過酷な労働を強いられたとして、当時の中国人労働者と遺族計12人が国や新潟市の港湾物流会社「リンコーコーポレーション」を相手に総額2億7500万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が14日、東京高裁である。一審の新潟地裁は04年3月、過酷な強制労働について国と企業の責任を認め、原告11人に1人800万円の支払いを命じた。一連の訴訟は全国で16件起こされているが、国と企業の賠償責任が認められたのは新潟訴訟のみで、高裁の判断に注目が集まる。

 提訴しているのは、中国・山東省などに住む79〜88歳の元労働者と遺族。約900人の若い中国人が連行されてきたが、新潟西港(隣港埠頭(ふとう))で石炭や大豆運びなどの過酷な強制労働に従事。約1年間で159人の死者と多数の傷病者が出たとされている。

 一審判決は、食事や衣料、労働管理などの面で、リ社側が安全配慮義務を怠っていたと指摘し、国も何ら監督、是正せず、この義務に違反したと認めた。

 一方、全国の同種の訴訟では判断が分かれ、国と企業双方の賠償責任が認められたのは新潟訴訟のみ。旧憲法下での行為に国が責任を負わないとする「国家無答責」や、すでに損害賠償請求権が消滅したとされる「除斥・時効」の法理により、原告敗訴が相次いだ。

 また、今回注目されるのは、「日本国に対する戦争賠償の請求を放棄する」とした72年の日中共同声明で、中国人“個人”の請求権も放棄されたかどうかの判断。

 「広島訴訟」では、二審広島高裁が「中国国民(個人)の請求権の放棄までは含まれない」と判断したが、上告審の最高裁は今月16日に弁論を開くことを決定。高裁判決が維持される場合、通常は弁論が開かれないため、二審の判断が覆るとの公算も出ている。

 新潟訴訟の原告弁護団は「仮に請求件放棄が認められれば、一連の訴訟で労働者側の国への請求権が一掃されてしまう」と懸念している。

http://mytown.asahi.com/niigata/news.php?k_id=16000000703130005