県都福井市の中心部の整備は、福井市のみならず、２１世紀の県勢発展にとって極めて重要な役割を果たす大プロジェクトであり、福井市とともに、県民が夢と誇りを持てる県都にふさわしい都市空間を整備−−（知事マニフェストから）
マニフェストの描いた県都像だ。が、この４年間、ＪＲ福井駅を核とする中心市街地の空洞化はますます深刻化し、今や全国有数の「郊外型都市」を形成しているといっても過言ではない。
■
中心市街地（福井駅周辺１０５．４ヘクタール）の商店数は３６０店（０４年度商業統計調査）で、９７年度に比べ３０％減っている。とくに駅前の空き店舗は年々増えており、昨年８月現在で６９カ所と、５年前の約２．７倍に膨らんだ。
深刻なのは商業だけではない。福井市郊外や近隣市町の宅地開発によって、中心市街地の人口は２５年間でほぼ半減。高齢化率２８．５％（０５年度）と、同市平均を８ポイント上回る高さだ。
福井駅前商店街振興組合の加藤幹夫理事長（５７）は「図書館などの公共施設や病院も郊外への転出が進み、車がないと暮らせないまちになった」と嘆く。
■
中心部とは逆に、市郊外の大型店の立地数は増加が続く。同市北部の大和田地区。国道８号沿いに各種の大型店が立ち並ぶ。各店舗の売り場面積合計は０２年の約６万１４００平方メートルから、０４年には約７万３８００平方メートルに増加。年間販売額も、０２年には中心市街地一帯と拮抗（きっこう）していたが、０４年に“逆転″した。
県内全体でも、小売業の年間販売額のうち郊外が占める割合は３５．７％と、全国４７都道府県で最もシェアが高い。一方、中心市街地の割合は１５．７％と、都道府県別では下から３番目に低迷している。
■
郊外型の大型店の建設は、９２年に改正大規模小売店舗法が施行され、容易になった。９６年度から市中央卸売市場周辺などで始まった同市の土地区画整理事業も拍車をかけた。幹線道路沿いには、大規模商業施設が建設できる「準工業地域」の事業地があり、進出が相次いだ経緯がある。
背景には県特有の事情も影響している。自家用車の保有台数は人口千人あたり５５８台で全国８位、持ち家比率も７６．１％で同３位と高い。福井商工会議所地域振興部の峠岡（みねおか）伸行次長は「持ち家志向が強く、郊外居住の傾向が高い。車でのアクセスが便利な店に人が集まるのは自然な流れと言える」と分析する。
県が中央大通りに整備中の福井駅西口地下駐車場（２００台）は、着工から６年を経て今秋に供用開始の予定だ。車による来街者のまちなか回遊への効果が期待されている。しかし、空き店舗跡地などがコインパーキングに変わってきており、駐車場は既に供給過多と冷めた見方の商店主も少なくない。
■
際限のない出店に歯止めをかけようと、いわゆるまちづくり三法の改正を受け、県は今年度内に「まちづくりガイドライン」を策定する。各市町が独自で設ける立地規制の指針となる。
床面積１万平方メートル超の大型店の準工業地域への立地を制限▽出店計画が明らかになった場合、県と関連市町で協議機関を設置し「広域調整」する、などを盛り込む。
鯖江市では関東に資本を置く大型店の出店計画が進む。福井市との市境に近く、嶺北一帯を商圏に見込んでいる。計画に反対する鯖江市内の男性商店主（５７）は「大型店の進出で地元商店街が淘汰（とうた）されれば、車を利用できないお年寄りらの生活にも打撃を与える」として自治体の規制強化策に期待を寄せる。
こうした事情は県内各地で共通する課題だ。福井市に加え敦賀、越前、大野の各市は、内閣府が認定すれば財政支援を受けられる「中心市街地活性化基本計画」の策定作業を進めている。居住人口▽ホテル宿泊者数▽歩行者通行量などの数値目標を設定し、にぎわい創出に向けたイベントスペースや住宅供給などを展開する内容だ。
県商業・サービス業振興課の林雅則課長は「高齢者夫婦の居住促進を契機に、地域コミュニティーの創出や関連事業の民間投資を誘引するなど、相乗効果を上げるにはある程度の長期的視野が必要だろう」と話す。
ＪＲ福井駅西口では、県都の玄関口としての広場やビルなどの再開発計画、えちぜん鉄道のＬＲＴ（次世代型路面電車）化などが起爆剤として期待される。だが、中心市街地の活性化への効果はまだ未知数だ。
福井駅前商店街振興組合の加藤理事長は「働く、学ぶ、遊ぶ、などの都市機能の回復に向け県が具体的な目標を掲げることが、県外からの投資意欲の誘導にもつながるはず」と訴える。（佐藤美恵）
◆
西川一誠知事が０３年に掲げたマニフェスト「福井元気宣言」。盛り込まれた政策について課題を取り上げ、その達成度などを検証する。
http://mytown.asahi.com/fukui/news.php?k_id=19000000703130003