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2007年03月13日(火) 00時00分

82歳元区長、断食抗議朝日新聞

 公的年金資金を投じて建設され、経営不振で03年に閉鎖された大型保養施設「グリーンピア南紀」(那智勝浦町、太地町)の跡地利用問題で、那智勝浦町市屋地区の元区長、引地暎治(えいじ)さん(82)が、香港企業への賃貸後譲渡は「地元との約束違反」として、抗議の断食を続けている。引地さんは70年代、地区代表として土地買収にかかわった。「転売しない条件で先祖伝来の土地を売った。当時結んだ覚書に反する」と、町と香港企業の契約の撤回などを求めている。  (松尾一郎)

 引地さんは10日正午、同地区などが跡地内に所有するというため池「与根河池」のせき上にテントを設置し、水だけしかとらない断食を始めた。同町職員らが中止を促したが拒否されたという。

 同地区の住民は12日夜、住民総会を開催し、跡地利用問題について協議。現区長が事業計画について進出企業や町と合意した文書の撤回を決めた。同町は県と地元地区との3者協議を、16日にも開催したいとしている。

 引地さんや同町などによると、同町部分の跡地302万平方メートルのうち約205万平方メートルは元々、市屋地区の共有地や個人の私有地。旧年金福祉事業団が72年ごろから、大規模保養基地構想などに基づいて、県や町を通じて土地の買収に当たった。当時、区長だった引地さんは県や町などと交渉を重ね、「買収した山林、土地について買収目的に反した利用はしない」などとした覚書を結んだ上で、73年に買収に応じたという。

 引地さんは05年夏、新聞報道で香港企業との契約や同社の開発計画を知り、同町に抗議した。町議会へも06年9月に「(香港企業への)譲渡は覚書に反し無効」と訴える陳情書(継続審議中)を提出。与根河池は同地区などへ農業用水を供給していることから、引地さんは「与根河池流域を守らないと生活や生命にもかかわる。譲渡や開発は認められない」としている。

 町産業課の亀井二三男課長は「覚書に違反していないと考えるが、(香港企業に賃貸しているという)現状を踏まえて、町と地元と企業で新しい覚書をつくりたい」としている。

 香港企業の現地法人とされる会社が現在、山林部に別荘の建築や作業道(約3キロ)の工事などの計画を進めている。しかし、ホテル再開などをうたった投資事業は、計画通りに実行されていない。香港企業について、亀井課長は06年6月の町議会で「資本金1万香港ドル(約15万円)のペーパーカンパニー」と認めつつも、中国・海南島のリゾート開発会社の資金を介するための会社として、事業計画に影響はないとしている。

http://mytown.asahi.com/wakayama/news.php?k_id=31000000703130004