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2007年03月13日(火) 23時21分

前脚の手動装置「異常」 全日空事故機の機長が証言朝日新聞

 高知空港に13日、全日空1603便(ボンバルディアDHC8—400型)が胴体着陸した事故で、前輪が下りないトラブルに見舞われた今里仁機長(36)が、「緊急の手動操作で前輪を出そうとしたが、途中で止まってしまった」と話していることが分かった。安全性を高めるためのフェールセーフ機能も働かなかったことになる。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は、事故調査官を派遣。機長らから事情を聴き、機体の構造と整備の両面から原因を詳しく調べるとみられる。

事故機の手動ハンドルの仕組みのイメージ図

 同調査委は同日夜、記者会見し、「人為的ミスとは考えられず、必要ならばボンバルディア社に設計変更を求める可能性もある」と話した。

 国交省によると、事故が起きた機種は、前輪を下ろす仕組みが通常用と緊急用の2系統ある。

 通常用は、操縦席にあるレバーを操作すると、油圧で作動する。前輪と脚を胴体下部に格納した部分のドアが開き、次いで前輪が下りる。

 通常操作で出ない場合には緊急用の系統を使う。まず脚を動かす油圧のスイッチを切り、操縦室の床下にあるハンドルを上に引く。すると、金属製ケーブルと滑車でつながっている脚の格納ドアのロックが外れ、さらに引くと前輪が自然に下りる仕組みだという。

 全日空によると、事故機の機長はまず通常の操作をしたが、前輪が下りていないという計器表示が出た。このため、緊急用の手動ハンドルを引いたが、ほとんど反応がなく、引っ張れなかった、と説明しているという。

 調査委の調べでは、事故機の前輪の格納ドアは開いておらず、ロックがかかったままだった。

 同社は脚の手動操作システムは、飛行時間4000時間ごとの重整備で点検すると規定している。事故機は2967時間でこれに達しておらず、05年7月に全日空に納入されて以降、作動させての点検は行われていなかった。

 2月27日には整備士が脚回りを目視で点検したが、異常は見つからなかった。事故以前の飛行でもトラブルはなかったという。

 この機種は双発プロペラ機で、全日空グループのエアーセントラルとエアーニッポンネットワーク、日本航空グループの日本エアコミューターが運航している。

 事故を受けて国交省は13日夕、「耐空性改善通報(TCD)」を発出。国内で使われている同型機22機と、似た構造の前輪を装備しているDHC8—100〜300型14機の計36機について、前輪が正常に動くかどうかの作動点検を3日以内に行うように指示した。

 各社は点検を進めており、9機を保有する日本エアコミューターは14日のダイヤに影響しないように終える見込み。13機を保有する全日空は、点検が終わらない分は欠航や、機種を変更して運航する。

http://www.asahi.com/national/update/0313/TKY200703130321.html