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2007年03月12日(月) 16時14分

核計画知りうるイラン元国防次官が失跡 亡命説と拉致説朝日新聞

 イランの元国防次官が旅行先のトルコで失跡し、欧米メディアは、イランの軍事機密を握る人物が亡命した可能性があると報じた。イラン側も元次官の所在不明を確認したうえで、米国やイスラエルの情報機関に拉致された疑いが強いと主張。イランの核開発をめぐり、米国の軍事行動も取りざたされる時期だけに、失跡は様々な憶測を呼んでいる。

 各種報道を総合すると、行方不明となったのは、アリレザ・アスガリ氏(63)で、05年夏に退陣したハタミ前大統領時代に国防次官を務めた。シリアを訪問した後、2月7日にトルコ・イスタンブールの高級ホテルにチェックインし、その後、消息が途絶えたという。

 アスガリ元次官について、イスラエルの新聞は、同国の情報機関モサドで勤務経験のあるジャーナリストの話として「イラン軍組織のエリート、革命防衛隊の高官で、核計画について知る立場にあった」と報じたほか、モサドか米国の情報機関が誘拐したか、亡命を手助けしたとする観測情報を掲載した。

 また、米紙ワシントン・ポストは8日、アスガリ氏がイランを出国し、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに関する情報を西側情報機関に提供しているとする米高官の話を報じた。

 イラン側は6日、警察当局者が「国防分野に詳しいため、西側の情報機関に拉致された可能性はある」と述べ、モッタキ外相も「トルコに外務省から調査使節を派遣した」と失跡を認めた。

 元国防次官として、核施設や軍事施設など国家の最高機密にも関与している可能性があり、イラン側が神経をとがらせている様子がうかがえる。

 国外メディアで飛び交う情報に対抗し、イラン革命防衛隊出身高官が運営する有力ニュースサイト「バズタブ」は10日、「アスガリ氏の妻と子供がテヘランにいることが確認された」と報じた。国外移住の計画もなく、モサドや米国の情報機関に拉致された可能性が強まったとし、亡命説は意図的に実態をゆがめていると批判した。

 失跡の現場となったトルコは、敵対するイラン、イスラエル両国と友好関係がある。トルコメディアによると、7日、トルコ外務省報道官は「アスガリ氏の失跡事件を知らされたばかりだが、関係当局が慎重に調査している」と述べた。

http://www.asahi.com/international/update/0312/014.html