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2007年03月12日(月) 00時00分

裁判員制の周知着々朝日新聞

  導入が2年余り先に迫った裁判員制度。司法を身近で分かりやすくすることが狙いだが、「会社員などには負担が大きすぎる」との声が根強い。選ばれると、判決まで仕事を休まないといけないからだ。「企業側と連携を深め、県民が参加しやすい環境を作ることが、成功の鍵」と、制度のスムーズな導入を目指す検事や裁判官らの企業行脚が活発になっている。(小暮純治)

  「市の職員が選ばれることもある。心おきなく参加できるように環境の整備をお願いしたい」

  宮崎地検の高田明夫検事正と県弁護士会の真早流(まさる)踏雄会長、宮崎地裁の橋辺隆司事務局長らが先月、宮崎市役所を訪問、津村重光市長に制度の協力を求めた。県内の法曹三者そろっての依頼に、津村市長は「現行規則でも、証人として出廷などができる特別休暇の規定がある。前向きに検討したい」と応じた。

  制度が適用されるのは殺人や強盗致傷などの重大事件。地裁によると、05年は県内で32件あった。試算では、20歳以上の県民は年に3671人に1人の割合で裁判員や予備員に選任される。いったん裁判員に選ばれると、3〜7日間ほど出廷する必要があるという。

  「負担」を理解してもらおうと、地検は昨年夏から、企業への「営業活動」を展開。了解を得た企業でこれまで約15回の説明会を行い、検事らがスライドなどを使って仕組みや意義を説いた。裁判員の日当額や、辞退できる場合など具体的な質問も出るという。

  昨年12月には、約400人の従業員がいる王子製紙日南工場(日南市)で説明会を開催。勤務が3交代制のため、全員が参加できるよう4日間実施した。同工場は「従業員が多く、実際に選ばれる可能性が高い。具体的な対応はこれから検討するが、今から意識を高める必要はある」と話す。

  一方、企業側にも具体的な動きが出てきた。

  宮崎市の電気工事会社「三桜(み・さくら)電気工業」(大野拓朗社長、従業員約200人)は先月、裁判員などに選ばれた社員が有給休暇を取れるように就業規則に新規定を加えた。宮崎労働局によると、県内企業で初の試みだ。

  昨年11月に会社を訪れた裁判官から制度の説明を受け、大野社長が「社会貢献しようとする社員を会社が支援するのは当たり前」と即断した。「会社は、病気などで欠員が出るのがごく自然。それを許容できないのはそもそもダメな会社」と大野社長は言う。

  宮崎労働基準監督署は「休暇を有給か無給にするかは経営者の判断だが、裁判員に選ばれた場合の対応を就業規則にきちんと明記しておけば、社員は参加しやすくなる」と指摘している。

http://mytown.asahi.com/miyazaki/news.php?k_id=46000000703120002