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2007年03月12日(月) 22時55分

打撃センター、消える「松坂」 大リーグ入り肖像権の壁朝日新聞

 「マツザカ」の姿がバッティングセンターから消える——。ピッチングマシンに使われていたプロ野球選手の投球シーンのうち、松坂大輔投手らの映像が、大リーグ移籍に伴って日本の球団との肖像権使用契約が切れることから使えなくなる。これまで月5000円程度の「格安」で使用できたが、今後は米大リーグ機構(MLB)に加えて選手個人と改めて契約することが必要となり、使用料は予測がつかない。大リーガーとの「再戦」はなるか。

昼下がりのバッティングセンターで、中学生が西武時代の松坂投手の映像を相手に打撃練習に汗を流す。右は阪神時代の井川投手

 「移籍のため対戦もあと少しで終わりです。思い出にもう一度」。神戸市西区のバッティングセンター「メジャードーム」に2月から、こんな案内が張り出されている。レッドソックスに移籍した松坂投手(元西武)のほか、ヤンキースの井川慶投手(元阪神)やパイレーツの桑田真澄投手(元巨人)の映像が、いずれも3月いっぱいで使用できなくなるためだ。

 週1回は松坂投手と「対決」するという小学3年の長田力哉君(9)は「これが最後の勝負、という気持ちで来ました。もう会えなくなるのはつまらない」。店側は「少年野球のメンバーも『松坂のフォームを見るだけでも練習になる』とよく来ていただけに残念。3人が一度にいなくなるなんて、売り上げが落ちるかも」と漏らす。

 この装置は「バーチャルバッティング」と呼ばれる。93年に日本で初めて装置を開発・製造したというキンキクレスコ(大阪府池田市)によると、全国に1000以上あるバッティングセンターのうち、約300カ所で導入されているという。

 投球映像は所属球団のユニホーム姿で、現在、10人ほどのプロ野球投手の映像が使用されている。松坂投手の映像は全国179カ所のバッティングセンターで使われ、桑田投手(50カ所)、井川投手(40カ所)と比べ、人気は群を抜く。キンキクレスコの堀川三郎社長は「高校時代からの活躍に加え、くせのないきれいなフォームが受けたのでしょう」。

 装置1台につき、バッティングセンターが球団側に支払う肖像権使用料は、月5000円前後。「選手のPRや野球ファン拡大のため、安く設定している」(球団関係者)という。だが、松坂、井川、桑田の3投手とも昨年末までに日本での所属球団との契約が切れ、業者と球団の肖像権使用契約も打ち切られた。各バッティングセンターの映像は、3月末までに順次消去される。

 「MLBジャパン」(東京)によると、日本人投手が大リーグ球団のユニホーム姿でバッティングセンターの映像に使われた例はない。大リーガーの映像を使用する場合は、日本のように球団とではなく、MLBおよび選手個人と肖像権の使用契約を交わすことになるという。MLBジャパンの担当者は「大リーグの人気拡大に役立つと判断されれば料金面も配慮されるが、あくまでケース・バイ・ケース」と歯切れが悪い。

 バッティングセンター業界で、大リーグ移籍後の再契約に向けた動きはまだ具体化していないという。松坂投手の肖像権などを管理している「アーキテクト」は「野球好きの日本の子どものためにも、大リーグ移籍後の投球映像使用を前向きに考えたい」と話す。

 キンキクレスコによると、松坂投手らがいなくなった後の「一押し」は、豪速球が持ち味の藤川球児投手(阪神)。川上憲伸投手(中日)や五十嵐亮太投手(ヤクルト)も人気がある。さらに、注目の新人や若手投手の「起用」も検討中という。

http://www.asahi.com/culture/update/0312/016.html