【参戦】
近ツーの高級旅行専門店「銀座支店(仮称)」は、銀座2丁目に建設中の銀座マロニエビル8階にお目見えする。周辺は今年12月にブルガリ銀座タワーが開業するなど、国内外ブランドのブティックがひしめくエリアとして知られる。
同社は、商談やコンサルティング用のサロンを設け、自分だけの旅行をオーダーメードできるなど、従来型の支店とは一線を画す新形態の店舗を目指す予定。
ターゲットは、大量退職時代に突入した団塊の世代を含めた富裕層で、「ラグジュアリー(ぜいたく)マーケットに特化し、少人数で催行できる高品質で高付加価値の旅行を提供します」(同社広報部)。
何やらお堅い言葉が並んでいるところに、同社の意気込みが伝わってくる。初年度の取扱高などは非公表という。
【先行組】
高級旅行専門店の銀座開設は、業界最大手のJTBが2003年9月に「ロイヤルロード銀座」(銀座6丁目)を立ち上げたことに始まる。
中をのぞくと英国調のサロン風で受付嬢がつつましくお出迎え。応対してもらうには予約が必要で、なかなか敷居は高そうだ。
試しに全17ツアーが掲載される「夢の休日」のパンフレットを繰ると、思わず絶句。ゴールデンウイーク中の「陽光溢れる南イタリアの魅力9日間 魅惑のカプリコース」の料金が188万円と記されている。団体さま10人分の料金かと思ったら、これが大人1人分というから、かなりのゴージャスぶりだ。
利用者もそれにふさわしい弁護士、医師、会社役員が多く、破格の料金なのに「80−100人のキャンセル待ち」(同)というから、2度ビックリ。「夢の休日」の売上高は堅調に推移し、「例年120%の伸び」(同店)という。
HISも一昨年6月に「ヴィヴァレット銀座」(銀座4丁目)を開設した。同店では、ビジネス・ファーストクラス旅行の研修を受けた「ビジネスコンシェルジェ」という独自のスタッフが応対にあたる。
客層は40−60代の富裕層で、昨冬の売れ筋ナンバーワンは「全日空で行く香港3日間」(17万7000−27万6000円)。
変わったところでは、「ほぼ毎日、プライベートジェットの問い合わせを受けます」(同店)。利用すれば1人当たり2000万円は下らないプライベートジェット。そんなぜいたくな相談が頻繁に舞い込むというのだから、カネはあるところにはあるらしい。
【格差社会】
JTB、HISが先行し、近ツーが後を追う。その3社の店舗の位置は極めて近く=地図参照、HISの店舗を基点にそれぞれの店舗まで歩くと約4分。5月以降、三つどもえの戦いは激しさを増しそうだ。
HISでは近ツーの進出を受けて、「銀座に高級旅行を取り扱うお店が集まり、お客さまの認知度が上がることを喜ばしく感じています」と大人のコメント。JTBも同様の見解で、一応、静観の姿勢でいる。
大手3社がしのぎを削る高級旅行市場。経済アナリストの森永卓郎氏は「市場は今後、確実に伸びていくと思いますが、ある意味、格差社会の象徴でもあるんですよね。団塊の世代の退職金といっても大企業は別として中小企業は1000万円台がせいぜい。旅行に数百万円もあてていたらすぐになくなってしまいますよ」。
このコメントに思わずうなずいてしまった…。
ZAKZAK 2007/03/12