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2007年03月11日(日) 01時42分

コソボ独立調停打ち切り、安保理で来月協議へ読売新聞


ウィーンでコソボ独立をめぐる交渉に臨むセルビアのコシュトゥニツァ首相(左)とタディッチ大統領=ロイター

 【ウィーン=石黒穣】セルビア・コソボ自治州の実質的な独立を勧告するアハティサーリ国連事務総長特使の仲介案をめぐり、セルビア、自治州政府双方の首脳が10日、ウィーンで最後の交渉に臨んだが、歩み寄りのないまま終了した。

 アハティサーリ特使は、「交渉は尽くされた」と述べ、月内に仲介案を国連安全保障理事会に提出する考えを表明した。コソボ問題は今後、安保理に舞台を移す。

 交渉で、多数派アルバニア系住民を代表する自治州政府のセイディウ大統領は、「今こそコソボが主権国家として独立を認められる時だ」と満足感を示したが、セルビアのタディッチ大統領は、仲介案は「根本的に受け入れられない」と主張した。

 特使が先月初めに提示した仲介案は、「独立」への直接的言及を避けつつ、国連の暫定統治下にある自治州に独立国家と同等の法的地位を与えている。自治州は憲法制定、国際条約締結、国際機関加盟、独自の国歌・国旗を持つことが可能となる。一方で、少数派セルビア系住民の権利が損なわれないよう、欧州連合(EU)主導の国際機構が当面、行政運営を監督することも規定している。

 仲介案は、昨年2月以来15回に及んだ直接交渉で、自治の枠内での解決を主張するセルビアと、完全独立以外の選択肢を排除する自治州の溝が埋まらなかったことから提示された。特使は、仲介案の修正にも応じる方針を示し、ウィーンで先月下旬、双方の実務レベル代表を招き調整したが、進展はなかった。

 現行の暫定自治の枠組みを定めた1999年6月採択の安保理決議は、セルビアが自治州に主権を有することを認めており、自治州が独立するには、新決議が必要となる。欧米諸国は自治州独立に賛成しているが、セルビアと緊密なロシアは、セルビアの同意がないまま独立を認める決議に反対している。安保理協議では拒否権を持つロシアの動向が焦点となる。

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070310i113.htm