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2007年03月11日(日) 01時54分

3月11日付・読売社説(1)読売新聞

 [中教審答申]「教育改革論議を加速させよ」

 1か月足らずの、駆け足審議だった。国の権限強化を狙った文部科学省の強い姿勢もあって終盤に議論は迷走しかけた。だが、中央教育審議会は、どうにか教育改革関連3法案の骨格をまとめ上げた。

 安倍首相は、今国会に速やかに法案を提出し、中身の濃い教育論議を繰り広げてもらいたい。

 もめたのは、地方教育行政法改正案に関する審議だ。教育委員会に対する国の権限強化が最大の論点になった。

 いじめや未履修問題での、一部教委の対応のまずさを念頭に、教育再生会議は教委に対する文科相の是正勧告・指示権限の付与を提案した。都道府県教委の教育長任命にも文科相が関与できるようにすべし、との考え方も示していた。

 この文科相の二つの権限は、1999年の地方分権一括法制定を受けて廃止されている。国の関与の縮減など分権化が教育の面でも進められたわけだ。

 政府の規制改革会議は、権限の復活はそうした分権の流れに逆行するものだと反論した。全国知事会、全国市長会など地方6団体も同調した。

 文科省の姿勢は強硬だった。

 再生会議の提案に沿い、二つの権限復活を明示した改革案を中教審に示した。教委が私立学校に指導・助言できるようにすることなども盛り込んだ。

 「国の強い関与は疑問」と、中教審委員には異論が多かった。与党内からも「文科省は、やりすぎだ」との声が出た。

 中教審は結局、教育長人事への国の関与と私学への「指導」は事実上、見送り、是正勧告・指示権の復活は認めた。

 「これで十分、成果はあった」という受け止め方が文科省内にはある。うまく再生会議や中教審を主導できたというのだろうが、やや強引だったとの印象はぬぐえない。

 答申では、教員に10年ごとの講習を義務づける免許更新制を盛った教員免許法改正案などの骨格も示されている。不適格教員に対する人事管理の厳格化も盛り込まれた。問題教師を教壇に立たせないため、各教委が適切な対応のできるよう、しっかりした法整備が必要だ。

 改正教育基本法の理念に沿った学校教育法の改正案では、小中学校の目標規定に「我が国と郷土を愛する態度」を養うといった項目も加えられる。

 学習指導要領の改定作業も本格化するだろう。「授業時数増」「小学校の英語」など検討すべきテーマは多い。

 中教審は、今後の議論の中でも、教育改革の様々な課題について随時、意見を述べていってもらいたい。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070310ig90.htm