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2007年03月11日(日) 01時54分

3月11日付・読売社説(2)読売新聞

 [アフガン情勢]「放置できないテロ勢力の復活」

 アフガニスタンを実効支配していたタリバンと、国際テロ組織アル・カーイダが、急速に勢力を復活させている。

 タリバンは春季攻勢の準備を進めているという。アル・カーイダに至っては、新しいテロの機会を狙っているのではないか、との懸念ももたれている。

 9・11米同時テロの後、米英を中心とするアフガン攻撃で、タリバン政権は消滅した。その保護下で拠点を築き、同時テロを実行したアル・カーイダのビンラーディンらもアフガンを去った。しかし、いずれも、その息の根を完全に止められたわけではなかったようだ。

 アフガンを訪問したチェイニー米副大統領が、カブール北方の米空軍基地に滞在中、付近で発生した自爆テロも、タリバンの勢力拡大をうかがわせた。

 両勢力が復活を果たしたとなれば、世界の安全に対する重大な脅威が再度高まっていることになる。国際社会は、そうした認識の下、テロ撲滅のための戦線を改めて強化する必要がある。

 タリバン掃討作戦の先頭に立つ米英両国のうち、米国は交代予定だった3200人の駐留を4か月延長した。英国は1400人の増派を決めた。北大西洋条約機構(NATO)を軸とする国際治安支援部隊(ISAF)が、両勢力に対する警戒を強めていることを示すものだ。

 隣国パキスタンがアフガン情勢に深くかかわっていることが、事態を一層複雑にしている。

 タリバンやアル・カーイダは、アフガン国境に近いパキスタン領内に拠点を築き、アフガン東・南部へと出撃していることが確認されている。

 チェイニー副大統領が、アフガンと前後してパキスタンを訪問し、ムシャラフ大統領と会談したのも、武装勢力の掃討を求めるためだった。

 ムシャラフ政権は以前から、同様の要請を受けながら、強硬な措置を取ることには消極的だった、とされる。だが、ことは世界の安全にかかわる問題だ。本腰を入れて取り組まないなら、ムシャラフ政権は、国際社会の厳しい目を覚悟しなければなるまい。

 アフガンのカルザイ大統領にも課題がある。何よりも、政権全体にはびこる腐敗体質の一掃を急がなければならない。現状のままでは、復興は困難である。

 安倍首相は1月、NATO本部を訪問し、医療、学校建設、人道支援の3分野でアフガン協力姿勢を示した。民生面での日本の貢献に対するNATOの期待は大きい。復興のため、日本としてできる施策を着実に実行することが重要だ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070310ig91.htm