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2007年03月11日(日) 00時00分

呼吸器装着に大差 難病ALS 『外す権利』半数容認 東京新聞

 全身の筋肉が動かなくなる進行性の難病、筋委縮性側索硬化症(ALS)の患者が呼吸困難になり、延命のために気管切開をして人工呼吸器を装着した割合は、ほぼ100%から10%未満まで病院間で大きな差があることが十日、共同通信が実施した全国調査で分かった。余命を大きく左右する呼吸器装着の割合がケア体制の地域差や医師の説明方法に影響されている実態が浮かんだ。

 一方、一度つけた呼吸器を患者が自らの意思で外す権利を容認する意見が約半数を占め、患者から取り外しを依頼された経験のある病院も19%あった。患者団体には「容認すれば、周囲の都合で死に追い込まれる恐れがある」と慎重論も強く、議論を呼びそうだ。

 調査は今年一−二月、神経内科がある大学病院本院と国立病院機構など計百八十三病院を対象に実施。七十八病院(43%)から有効回答を得た。

 呼吸器をつければ数年以上の延命が可能だが、たん吸引などで二十四時間介護が必要になる。家族の負担が大きく、装着をためらう患者も多い。厚生労働省研究班の推計によると、全国で呼吸器をつける患者は約17%。

 調査では過去五年程度に呼吸器をつけた患者の割合を尋ねた。最も多かったのは「20%以上50%未満」で二十七病院。「50%以上80%未満」が十七、「10%以上20%未満」が十三と続いた。「ほぼ100%」が一、「10%未満」が九だった。

 患者が呼吸器を装着しない理由(複数回答)は「つけてまで生きたくない」(73%)、「家族の介護負担が心配」(65%)など。

<メモ>筋委縮性側索硬化症(ALS) 厚生労働省指定の難病。手足が動かしにくい、食べ物がのみ込みにくいといった症状から始まり、感覚や知能ははっきりしたまま全身の筋肉が徐々に動かなくなる。進行すると食事や呼吸もできなくなる。発症年齢は40−60代が多く、男性の割合が高い。有効な治療法はないが、人工呼吸器をつければ数年から10年以上の延命が可能になった。患者は全国で約7300人。英国の著名な宇宙物理学者ホーキング博士も患者。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070311/mng_____sya_____007.shtml