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2007年03月11日(日) 00時00分

水俣病8年ぶり認定へ 熊本県審査再開大半は棄却か 東京新聞

 熊本県は十日、休止状態だった水俣病患者認定審査会を再開、申請者二人の審査を実施した。審査対象の一人は同県水俣市の緒方正実さん(49)で、審査会は認定相当との決定を出した。

 今後、熊本県知事に答申する。患者認定されれば、熊本県では一九九九年四月以来、八年ぶりとなる。

 水俣病患者としての認定を求め熊本県に申請している人は九日現在で三千二百八十三人。

 二〇〇四年十月の関西水俣病訴訟最高裁判決が行政の患者認定基準より幅広く水俣病被害を認めたが、熊本県は「公害健康被害補償法に基づく従来の基準で審査をする」と説明。審査会が再開されても全員の審査には膨大な時間がかかる上、大部分の申請は棄却されるとみられ、未認定患者救済の抜本的な解決にはつながらない。

 この日の審査会では熊本保健科学大の岡嶋透学長を委員長に選任。緒方さんは過去四回認定申請を棄却されているが、昨年の公害健康被害補償不服審査会で棄却処分を取り消す裁決が出ており、関係者は審査会が緒方さんについて認定相当との判断を固めたことを明らかにした。

 審査会は今後、年六回程度開催。診断書や疫学調査票などを基に認定、棄却、保留の判断をして県知事に答申を出す。水俣病患者と認定されれば原因企業チッソとの補償協定に基づいて千六百万−千八百万円の補償金などが支払われる。

 熊本県の認定審査会は関西訴訟判決後、行政と司法で二重基準ができた混乱から委員が再任を拒否。県が説得をして再任の承諾を得て、二年七カ月ぶりの開催にこぎ着けた。同様に審査会が休止している鹿児島県では再開のめどが立っていない。

 新潟県と新潟市は七日、約五年半ぶりに新潟水俣病の認定審査会を開催。審査会は二十二年ぶりに二人を認定すべきだとする答申を出した。

■3000人の審査30年必要?

 熊本県の水俣病認定審査会が十日、再開した。初日の審査対象者はわずか二人。二〇〇四年の関西水俣病訴訟の最高裁判決で被害が幅広く認められた影響から申請が急増し、申請者は九日現在で三千二百八十三人いる。

 同県水俣病対策課幹部は「審査に何年かかるか見当もつかない。ひょっとしたら三十年かかるかも」と話している。

 熊本県が最も懸念しているのが、カルテをつくる検診医の不足だ。申請者は眼科、耳鼻科、神経内科の検診が必要だが、神経内科医の不足が特に深刻。県が確保した医師は「五人に満たない」(水俣病対策課)という。

 一日に検診できるのは多くて四人といわれるが、民間病院の医師のため検診に時間が割けるのは月に数日。三千人超の申請者のうち神経内科の検診が済んでいるのは約七十人にすぎず、水俣病対策課の職員は「全力で医師の確保をしないと」と漏らす。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070311/mng_____sya_____009.shtml