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2007年03月11日(日) 00時00分

知識・ノウハウ乏しく朝日新聞

 「有権者に近い目線で判断した結果だ」

 一連の談合事件を受けて、昨年12月12日の県議会の調査特別委員会は、県が設置した外部有識者の委員会とは別の結論を出した。「談合の温床となった建設技術センターは廃止しなければ県民の納得を得られない」。委員長を務めた加藤貞夫県議(自民党)は会議後、そう強調した。結局、県は同センターに廃止を促した。

 議会が特定の課題について、首長の諮問機関とは別に特別委員会を立ち上げ、二つの機関が並行して議論する——。こうした形が試みられるようになったのは、最近のことだ。以前は執行部が設置する審議会に県議が議会代表として参加。執行部側はこれで「議会の意見を聴いた」というお墨付きを得ていた。

 00年の地方分権推進一括法施行以降、対等であるはずの首長が設けた諮問機関に従属するのはおかしい、声が議会で上がった。05年10月には県立大学の独立行政法人化を巡って、執行部とは別に議会で初めて個別課題に関する特別委員会を立ち上げた。加藤県議は「審議会は執行部の意向を追認する道具になる危険性がある。執行部から情報を得ながら、議会独自で議論するための仕組みだ」と、委員会の必要性を強調する。

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 議会と首長は、国会と違い別々の選挙で選ばれる。「対等」といわれるゆえんだ。地方自治法上、執行部の「監視」と「政策立案」が議会の存在意義を支える大きな柱だ。ただ、二つの柱は、どちらも機能してきたとは言い難い。

 県議会では戦後、執行部提案の条例が否決された事例はない。本宮市を除く県内12市でも、過去5年間で否決は南相馬市の2件のみだ。

 一方、99年の地方自治法改正で議員の条例制定権は拡充されたが、その後、条例作りが活発化したわけではない。政策にかかわる条例を議員が提出したのは、県議会で過去に「農業・農村振興条例」など4件(一部改正含む)だけ。12市でみても、昨年1年間で「何人もサルにえさを与えてはならない」という、福島市の「サル餌付け禁止条例」しかない。

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 議員自身の行政知識や条例作りのノウハウ不足。限られた議会事務局の人員など実務的な課題に加え、首長の予算提出権限を侵せない、など制度上の制約がある。

 県議会では01年に初めて議員提出の政策条例を作った際に、議員が条例を作る際の手順を制度化した。議長のもとに検討会を作り、各会派の代表の議員が集まり、条例案を練り上げていく。その後の条例も手続きにのっとって策定された。ただ、3件の条例策定にかかわった小沢隆県議(改進の会)は「技術的な話よりも、議会で作ろうという機運を盛り上げることに最も苦労する」と語る。

 「条例づくりだけが、政策関与ではない」という意見もある。三春町の本多一安議長だ。同町では、3年ほど前から町の重要な施策は全員協議会で政策形成段階から協議するようになった。「議会では是か非かの議論に終始する。議員への根回しではなく、議員全員で討論しながら、政策の中身づくりからかかわっていこうと、こういう形にした」と説明する。

 ただ、議論は非公開で、町民の目には触れない。本多議長は「議論の要点を公開したり、町民への報告を定期的にしたりして、議論を還元していく」と話す。

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 山梨学院大学の江藤俊昭教授(地域政治論)は「政策立案の過程で議員自身が行政知識を蓄えることになり、結果的に監視機能も高めることになる」という。議会事務局と担当部局の併任によるスタッフの充実、政務調査費の有効な活用、調査権の活用など、議会の政策能力を高めることは、工夫次第で可能だという。「議会が出来ることは多い。その権限をどこまで活用していくかが問われている」と話す。(おわり=このシリーズは田中美穂、渡辺崇、常松鉄雄、上田真由美、立松真文が担当しました)

■■都道府県議会の議員提出の政策にかかわる条例■■
(01年〜05年、全国都道府県議会議長会調べ)
(1)鳥取 11
(2)宮城  9
(3)高知  7
(4)島根  6
(5)三重  5
(6)北海道、岩手、東京、千葉、埼玉、京都 4
(12)福島 3
※条例の一部改正、修正・否決・撤回も含む

http://mytown.asahi.com/fukushima/news.php?k_id=07000000703110002