記事登録
2007年03月10日(土) 09時33分

「そのまんま劇場」、主役だけ目立ち第一幕終演朝日新聞

 「そのまんま劇場」の第一幕は、主役だけが目立ったまま終演——。東国原(ひがしこくばる)英夫(そのまんま東)知事の登場で注目された宮崎県の2月定例議会が9日、閉会した。ワイドショーが連日詳報する過熱ぶりのなか、知事選で敵対した県議たちは「人気知事」を前に腰砕け状態。副知事人事や公舎入居をめぐって迷走した知事の言動もかえって舞台を盛り上げた。来月の県議選を経て、6月定例議会で第二幕が開く。

 「『ご祝儀議会』という色合いがあった」。この日の本会議後、東国原知事は報道陣の前で23日間の議会との「攻防」を振り返った。遠慮がちな笑みとは裏腹に、「デビュー戦」は知事の独壇場だった。

 永友一美(いちみ)議員の質問に対し、名前を一味唐辛子にかけて「スパイスが利いて……」と笑いをとったかと思えば、「(県工事の)落札率が高いのは(議会が)死に体だった証左」と激しく挑発し、世間の目を引き続けた。

 ただ、ぶれもあった。議会前に「住む方向で」と答えた知事公舎については一転、「豪華すぎる、住まない」。知事選での対立候補を副知事にする奇抜な案は、総務省から出向中の県部長起用に変更された。

 だが、改選を控えた議員から厳しい追及はなかった。閉会直後、各会派へのあいさつ回りを終えた知事は見透かしたように言った。「自民さんもかなり良好な空気感だった。(開会前と)全然違った」

     ◆

 舞台で踊らされ続けたのが議員だった。

 「支持者に『あんまり知事をいじめないで』と言われました」「『ひたいが知事と似とる』と支持者に言われました」——。本会議で質問に登壇した17人の議員は、口々に知事を持ち上げた。

 テレビカメラを意識し、白髪を染めてきた議員も。あまりの「変節」ぶりに、最大会派・自民党の県連事務局には「議員は何をしているのか」と抗議電話が相次いだ。

 社民議員が、週刊誌に載った知事宅への女性宿泊問題をただすと、その日のうちに質問に対する批判メールが全国から約50通届いた。「知事は独身だから追及の必要はない」という内容にまじり、「次の選挙で落としてやる」と脅迫めいたものも。

 ある会派幹部は「知事をただす姿が県民にどう映るかを心配し、腰が引けた」と漏らした。

     ◆

 60人分の「観客席」は連日札止めが続いた。会期中の傍聴者は延べ773人。別室に設けられたモニターテレビの前にも人だかりができた。

 同県清武町の自営業小玉直也さん(35)は、委員会も含めて計8回傍聴した。「知事は新しい宮崎を作ってくれると信じている。選挙中の熱い姿とは違う面もあったが、今のところ、県民の側に立つ姿勢を保ち続けている」と話した。

 異色知事を支える県職員の胸中は複雑だ。幹部の一人は「これまでの官僚出身知事にはないPR力を持っている」と高く評する一方、「自由な答弁で聴衆を引きつけるやり方を、事務方が『やりにくい』と思っているのは事実」とも。そのうえで、「県庁も変わらなければいけないと、職員もわかっている」と付け足した。

http://www.asahi.com/politics/update/0310/004.html