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2007年03月10日(土) 00時00分

インスリン事件 「殺意あり」と認定 地裁朝日新聞

  死亡保険金からの報酬約束や暴力団員への殺害依頼——。千葉地裁は9日、夫にインスリンを投与し、植物状態に陥らせたとして、殺人未遂などの罪に問われていた鈴木詩織被告(34)に対し、懲役15年を言い渡した。立証が難しいとされる薬物を使った事件。ヨーグルトに農薬を混ぜた殺人未遂事件などが県内で相次いで明るみに出る中、古田浩裁判長は、犯行前の言動から被告が否認し続けた「殺意」を認定した。

 鈴木被告は03年10月から04年4月にかけて、横芝光町の自宅で、夫の茂さん(55)に鍋の熱湯をかけて大けがや、インスリンを注射して全治の見込みのない脳障害を負わせたとして、傷害と殺人未遂の罪で起訴された。弁護側はインスリンを注射でうったことは認めたが、殺意や傷害の故意を否認していた。

 これに対し、判決は、インスリンを渡したとされる大川久美子被告(42)=一審で懲役8年=が「事件前、鈴木被告から『原因わかんないで死んじゃう薬ないかな』と言われた」と供述していることを重視。さらに、鈴木被告が事件の約2年前から、知人男性を通じて死亡保険金からの報酬を約束し、暴力団員に茂さんの殺害を依頼していたことを指摘し、「インスリン入手までに殺意があった」と述べた。

 鈴木被告が「事故だった」と主張していた傷害事件についても、夫が事件後に実弟に話していた内容などから、「被害者をおびき寄せた上で大量の熱湯を背後からほぼ全身に浴びせかけた」と認定した。

 古田裁判長は、犯行動機について、茂さんとの間で、2人の子どもの親権をめぐる争いがあったことのほか、「死亡保険金を得る目的があったことも否定できない」と述べた。

 鈴木被告はこの日、白いシャツに、背中までかかる長い髪をなびかせて入廷。判決宣告後に古田裁判長から「インスリンを打ったことで被害者がどうなったか真剣に考えるように」と呼びかけられた際も、前を向いて黙ったままだった。弁護側は公判後、控訴する方針を示した。

http://mytown.asahi.com/chiba/news.php?k_id=12000000703100002