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2007年03月10日(土) 00時00分

妻の声頼りに絵筆 小平で遺作展朝日新聞

 がんで視力を失っても筆を握り続けた東京都小平市の清水伸一さんの作品展が9日、同市内で始まった=写真。ラーメン店を経営するかたわら、水彩画を描き続けた清水さんが亡くなって4年。妻の茂子さん(70)と知人らが、ほとんど展示されることのなかった作品を多くの人に見てもらおうと企画した。

 清水さんは大学生のころから山歩きが好きで、スケッチブックを取り出しては数分で風景を描いた。中学の同級生だった茂子さんと結婚してからも、時間を見つけては各地に足を運んだ。

 しかし、60歳を過ぎた清水さんをがんが襲う。鼻にできたがんは数年後には目に転移し、右目を摘出した。それでも抗がん剤を服用しながら、茂子さんと出かけて水彩画をしたためた。左目の視力も弱くなっていったが、茂子さんに風景の様子を聞き筆を動かした。

 茂子さんにとっては、夢を追い続けた夫だった。40歳をすぎてから脱サラしてラーメン店を開業。茂子さんはそんな夫を支えるため、保育の仕事を続けた。

 清水さんは03年6月、66歳で亡くなった。自宅に数百冊のスケッチブックが残された。今回、同級生だった知人らの手を借り、ようやく手つかずだったスケッチブックを整理することができた。

 作品展は同市たかの台の松明堂ギャラリーで。田園や街角を描いた風景画約50点。13日までで午前11時〜午後7時。

http://mytown.asahi.com/tama/news.php?k_id=14000000703120003