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2007年03月10日(土) 00時00分

人の話に、涙に、心打たれた 上野公園で『時忘れじの集い』 大勢の出席者の前で演奏する竹台高校の生徒たち=台東区で 東京新聞

 東京大空襲の犠牲者を悼み、上野公園内の記念碑前で九日開かれた式典「時忘れじの集い」には高齢の被災者や遺族のほか、高校生ら十代、二十代の若者も参加した。記念碑を建てたエッセイスト海老名香葉子さん(73)=台東区=の「つらい体験を次の世代に何としても伝えたい」という強い思いが形になった。

 海老名さんの息子で落語家の林家正蔵さん、いっ平さんの母校でもある地元の都立竹台高校(荒川区)吹奏楽部が出演。同校演劇部の女子生徒二人も演奏に合わせて海老名さんの詩を朗読した。

 十七歳の歌手、林明日香さんは、海老名さん作詞の「蓮花」を熱唱。戦争を語り継ぐ活動をしている若者グループ「P魂s(ピーソウルズ)」も、涙ながらに誓いの言葉を述べた。

 「大空襲への思いは薄かったけど、いろいろな人の話を聞いて、涙を見て、心を打たれた」。竹台高吹奏楽部長でトロンボーン担当の二年生、八戸香純さんは話した。

 式典終了予定時間をすぎても、立ち上がる人の姿はなく、若者たちの演奏や言葉に耳を傾けた。

 海老名さんと同い年で、学童疎開中に墨田区両国の自宅が全焼した体験を持つ千葉県市川市の女性は「私よりもっとつらい思いをされた人たちがたくさんいます。若い人たちに、空襲のことが伝わっているようでうれしい」と話した。

 「苦しい思いをして流してきた涙を、これからの平和のために声を出して伝えてください」。式典の最後、海老名さんは語りかけた。来年以降の式典への参加申し出も、いくつかの学校からあるという。 (小林由比)


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tko/20070310/lcl_____tko_____003.shtml