「いけないこととは思っていたが、家計を助けたかった」。プロ野球西武球団から“裏金”を受け取っていた木村投手は十日の会見で、悩んだ末に家族のために“誘惑”に応じたことを、沈痛な面持ちで明かした。
木村投手によると、高校三年だった二〇〇三年の夏、西武のスカウトから現金支給を持ちかけられ、「悪いこととは思いつつも、よく分からなかった」と語る一方で、母親(二〇〇四年十月に死去)から「家計が苦しい」と言われ、「親を思う気持ちの方が強かった。少しでも足しになるのなら」と苦悩の選択だったこともにじませた。また、西武には「三年後には(入団)という気持ちがあった」と恩義に感じていたことも明かした。
終始、小声で振り絞るように語った木村投手。報道陣からファンの期待を裏切ったことについて問われると「残念です」と唇をかみ、「これから西武には返済したい」と語った。当分、謹慎生活に入るが「いずれはプロでやりたい気持ちは変わらない」と胸中を明かし、深々と頭を下げて会見場を去った。
■球団初のPR用テレビCM自粛
西武の太田秀和オーナー代行は十日、本拠地球場で初めて行うロッテとのオープン戦を前に、午前十一時の開門時に一塁側ゲートに立って入場者を出迎えた。ファンからは「頑張ってください」という激励の声が多かったが、「何をしてるんだ」という罵声(ばせい)も飛んだ。
自身の進退について「自分としてはやりたい気持ちが強いが、こういう大きな事件を起こしてしまったわけですから、コミッショナー(代行)の裁定を待ってから決めたいと思う」と話すにとどまった。
また、この日から関東地域で放送を予定していた球団史上初めてとなるPR用のテレビCMの自粛を決めた。
■チームへの影響伊東監督は懸念
不正スカウト活動発覚から一夜明けた十日、西武の伊東勤監督は「あってはならないことだった。社会問題なので…。わたしを含めて反省しないと」と話した。公式戦の開幕を二十四日に控えており「選手は仕上げていかないといけない時期。負担はかけたくなかったが…」と、チームへの影響も懸念していた。
球団は春季キャンプ中に弁護士を招き、選手にコンプライアンス(法令順守)の意識を強化するなどしていた。それだけに、同監督も「社長(太田秀和オーナー代行)はルールに神経質なところがあった。これから球団を良くしていこうという矢先だったので残念」と沈痛な表情だった。
■松坂投手も「残念」
【フォートマイヤーズ(米フロリダ州)=共同】米大リーグ、レッドソックスの松坂大輔投手は九日、当地で、昨季まで在籍していた西武による不正スカウト活動の発覚について「球界全体でクリーンにいこうという時に、こういうことが起きるのは残念ですね」と語った。
同投手は携帯電話のニュースサイトで西武の不祥事を知ったと説明して表情を曇らせた。「一度信頼を失うと、取り戻すのは大変ですから」とも述べ、古巣が起こした問題を心配した。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/spo/20070310/eve_____spo_____003.shtml