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2007年03月10日(土) 00時00分

原告『苦しみ訴える最後の機会』 東京大空襲 国を提訴 東京新聞

 「余命が少なくなりつつある今だからこそ立ち上がった」。東京・霞が関の司法記者クラブで行われた記者会見で、原告団長の星野弘さん(76)はこう声を振り絞った。

 原告の平均年齢は七十四歳。星野さんは「国は空襲の追悼碑や記念館すらつくっていない。戦後、社会保障でまかなうとして、民間人被害への補償の議論は立ち消えた。国は空襲の被害実態を無視してきた」と訴えた。

 右腕を切断した豊村恵美子さん(80)は「片腕がないと差別され、コソコソ生きるしかなかった。裁判は、六十二年間の苦しみを訴えられる最後の機会です」と、義手を示しながら話した。

 豊村さんは大空襲で両親と姉、弟を一度に失った。その後の空襲で、機銃掃射を受け、右腕をなくした。片手では家事がうまくできず、離婚。重心が取れずに転倒を繰り返し、六回も手術した。骨はゆがみ、今も障害は進行している。

 豊村さんは言う。「戦災被害者は数が多すぎたから、補償対象から外された。だからこそ、国が被害を償えば、戦争を起こさない歯止めになる」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070310/mng_____sya_____011.shtml