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2007年03月10日(土) 00時00分

米で見直し論 企業トップの報酬に批判朝日新聞

 米企業経営者の高額報酬に歯止めをかける動きが、米議会で強まっている。「格差拡大」に不満を募らせる世論を追い風に、議会の主導権を握った野党民主党が中心になり、8日に開いた公聴会では「非常識な報酬額は、企業に対する信頼を揺るがす」などと批判が噴出。報酬額の是非を株主投票で問うことを制度化する企業も出始めており、春に本格化する米企業の株主総会でも論議を呼びそうだ。

 「私は経営学修士(MBA)の資本主義者だが、最近の高額報酬にはうんざりする。日々のやりくりに苦労する庶民が多いのに、億ドル(約118億円)単位を稼ぐ企業トップも少なくない」。米下院金融委員会の公聴会で8日、民主党議員からこんな声が出た。

 1月には、住宅関連の小売り大手ホームデポのナーデリ最高経営責任者(CEO)が辞任の際に総額2億1000万ドル(約250億円)相当の報酬を得た。約6年間のCEO在任中に株価低迷や下落が批判されたが、高額報酬になった。

 平均的な勤労者の年収に対する米主要500社のCEO報酬の比率は、05年が約370倍。70年の約30倍から大きく開いたとの試算もある。

 米政府統計によると、実質年収が10万ドル以上の世帯の比率は、05年が17.2%と10年前より4%幅上昇。1万ドル未満の貧しい世帯は8.3%と0.3%幅減少したが、7.4%まで改善した00年以降は拡大傾向にある=グラフ。

 米世帯の年収の中央値は、05年が約4万6000ドルで、5年前と比べて2.6%低下。大統領選の有力候補のヒラリー・クリントン上院議員は、ほぼ同時期に「労働生産性は17.5%も上昇している」と利益重視の企業を批判。教育や医療費の負担増などで中産階級から落ちこぼれる人が増えていることに、警鐘を鳴らしている。

 同委員会のフランク委員長(民主)は1日、証券取引法を一部改正し、CEOら企業首脳の本俸やボーナス、年金、退職金などの金額を分かりやすく情報開示させ、株主総会で報酬が妥当かどうか問う投票を制度化する法案を提出した。投票結果には拘束力はなく、それだけで報酬額が変わることはないが、毎年投票する制度を通して「株主が経営陣を監視し、圧力をかける手段を増やす」との狙いだ。

 米保険大手アフラックは2月、企業統治を強めるために同様の制度導入を発表。米メディアは「大手では米国初」と伝える。有力機関投資家の年金基金なども高額報酬への批判を強めており、今年の株主総会は過剰報酬への不満が表面化するとの見方が有力だ。

 米議会には共和党を中心に「制度化しなくても問題がある時には投票にかけられる。政府は干渉すべきではない」「大衆討議で報酬額が左右されると、有能な経営者は非上場企業に流出してしまう」などの反対論が多い。民主党は「同様の制度は英国で導入され、企業の競争力も強まった」と主張している。

http://mytown.asahi.com/usa/news.php?k_id=49000000703100006