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2007年03月10日(土) 07時02分

名物売店ノーサイド 釜石・仙人峠新道路開通で25日閉店河北新報

 岩手県釜石市甲子町の仙人峠で営業してきた「仙人売店」が25日、閉店する。仙人峠の新しい動脈になる仙人峠道路が18日に開通し、店が立つ国道283号の交通量が減ることから、看板を下ろすことになった。地域住民や市民は、名物売店の閉店を惜しんでいる。

 仙人売店は、もともと釜石鉱山が所有していた売店を、近くに住む佐藤園子さん(37)が引き継ぎ、1997年4月にオープンした。

 遠野市側から釜石に向かい、国道283号の仙人トンネルを抜けると最初にある店で、「釜石の西の玄関口」として親しまれた。50平方メートルほどの店内には、土産物や日用品、食料品が並び、通行客ばかりでなく地域住民も利用した。

 最近は峠に至る道沿いにコンビニエンスストアや道の駅などができ、売り上げはピークの3分の1に落ち込んだ。「仙人峠道路の開通でさらに客足は減る」と佐藤さんはやむなく閉店を決めた。

 笑顔で接する佐藤さんの明るさにひかれて通った人も多い。近くに住む女性(86)は「いつも優しくいたわってくれるので、買い物だけでなく、ただおしゃべりしに寄ったこともある。本当に残念」と閉店を惜しむ。

 佐藤さんは社会人ラグビーのクラブチーム「釜石シーウェイブスRFC」の熱狂的ファンで、店内には選手のサイン色紙やジャージー、写真などが飾られている。評判を聞きつけたファンが訪れ、ラグビー談議に花を咲かせるなど、チームのPRにも一役買った。

 土産物を買い求めに選手も多く立ち寄った。常連客で前ヘッドコーチの桜庭吉彦さん(40)は「試合ではグラウンドに響く声で、チームに元気を与えてくれた。非常に寂しくなるが、試合会場でまた元気な姿を見せてほしい」と言葉を掛ける。

 「店を閉じるのは残念だが、これまで支えてくれた人たちに感謝したい」と目を潤ませながら語る佐藤さん。「10年間にいろんな人と知り合えたことがわたしの宝物。これからは思う存分、シーウェイブスの応援をしたい」と話している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070310-00000010-khk-l03