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2007年03月09日(金) 00時00分

検証県議会(中) メモ元に「概要だけ」朝日新聞

 Uの字に並んだ17人の議員たち。その底の部分に座った共産党の議員がさっそく手を挙げて「世論も求めている……」。同じ列の市民ネット・無所属市民の会、社民・県民連合、水と緑の会の3議員が続いた。

 自民党議員1人の賛成意見をはさみ、この4議員は計8回、請願に対する賛成意見を次々と述べていった。

 採決の結果、自民、公明、民主の13議員の全員一致で「不採択」となった。共産などの4議員は、少数会派の「委員外議員」。規則上、採決には参加できなかった。

 2月27日の議会運営委員会の場面。意見だけみれば、「不採択1」に対して「採択4」だ。しかし、このすべてのやりとりを一語一句まで残す委員会の議事録は、県議会には存在しない。

 県議会委員会条例で定められている委員会の記録の形式は「会議の概要」。県職員が自筆メモを元に作成して、各委員長に渡す。その内容を3委員が確認したうえ署名する。録音や全発言の逐一筆記はとっていないため、これが公式な会議の記録となる。

 この議運委で「不採択」となったのは、議員に交通費や宿泊費の名目で支払われる「費用弁償」をめぐる市民団体からの請願だった。この日は、同団体から出された、常任委員会で詳細な議事録をとるように求める請願も審議された。

 団体は請願の中でこう指摘した。「常任委員会で録音や速記がないのは、都道府県議会では千葉、和歌山、岡山、愛媛の4県のみと言われる」。紹介議員の1人も「要点筆記では政策決定の経緯を検証できない。まとめる人の主観が入り、自分の意見が載らないこともある」と語る。

 全発言を記録するように求める請願は、06年6月県議会にも、別の団体から出されている。この際も不採択。議員の意見は「人員の確保、予算の問題など、いろいろと検討するべき課題が多い」などだった。

 ただ、県議会がまったく消極的、というわけではない。06年6月県議会から、ホームページで委員会質疑の一部を公開。各委員長が、委員会審議の結果を本会議に報告した内容から抜粋している。

 しかし、匿名で短行。どの議員がどんな意見を言い、どんな論戦が交わされたのかを、検証することは難しい。

 議事録がないため、余計なトラブルになった例もある。同じく06年6月県議会。条例案の審議の過程での議員の発言をめぐり、批判的な議員が「本当に言ったのか」と確認を求めた。議員は否定。結局、記録がないため、発言の有無は最後まで確認できなかった。

 先の請願2件を不採択とした議運委の「会議の概要」には、審議のやりとりがどう記載されるのか。通常ならば、統一地方選での改選を経て、6月県議会の前までには、情報公開の対象となる。

 ところで、千葉と同列と指摘された3県議会のうち愛媛県議会は反論する。「IC録音機で記録しており、ほぼすべて会議録に載せている」

http://mytown.asahi.com/chiba/news.php?k_id=12000000703090001