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2007年03月09日(金) 00時00分

川崎市長自ら保育料催促へ朝日新聞

  川崎市の阿部孝夫市長は、保育園の保育料を長期間にわたって滞納している市内の保護者と直接会い、支払いの催促に乗り出すことを決めた。8日の記者会見で明らかにした。05年度に市が回収できなかった保育料は約2億8千万円に上っている。市長自らが催促に出向く強い姿勢を示すことで、滞納額を少しでも減らそうという狙いがある。

(小島寛明)

  市長は会見で「待機児童が大きな問題となっているなか、ぬけぬけと滞納している人は許せない」と述べた。

  市によると、市長が催促の対象としているのは、1年以上の長期滞納者で、2月末現在で129人いる。4月から9月にかけてあらかじめ日時を決め、滞納者がいる保育園に市長が出向くという。

  市長のスケジュールは、平日はほとんど埋まっていて、週末も催しや会合に顔を出していることが多いが、市長は「夜でも週末でも構わない」と語った。

  川崎市の保育料は、平均で月額約2万4千円。無料から5万9600円までの幅で、所得に応じて保育料が決まる。分割での支払いや、急に収入が減る事情がある場合は減免措置もある。このため、市長は「原則として、払えないということはない」としている。ただ、「払えない事情のある人は一緒に解決策を考えたい」とも述べた。

  毎月の保育料が支払われない場合は現在、文書で保護者に支払いを促したり、園長が保護者と面談したりしている。

  ■深刻な待機児童問題背景

  川崎市の阿部孝夫市長が、保育料の滞納対策に自ら乗り出す異例の方針を明らかにした背景には、都市部における待機児童の多さという深刻な問題がある。

  市こども計画課によると、すでに入園している子どもも含め、1万4837人が4月に保育園への入園を希望している。しかし、市の認可保育所の受け入れ枠は1万2950人で、1900人近くが枠を超える見通しだ。

  大規模なマンション開発が相次ぐ川崎では、新たに生活を始める子育て世代も多く、入園を希望しても空きがなくて入れない待機児童の解消が大きな課題になっている。06年4月の待機児童数は480人だった。枠から漏れ、やむなく保育料の高い民間の認可外保育所を選ぶ親もいる。

  こども計画課の担当者は「希望してもかなわない児童がたくさんいるなかで、入所できた児童の親が保育料を払わなければ大きな不公平が生まれかねない」と話す。

  一方で、保護者らが滞納を続けたため、5年の時効を過ぎて回収できなくなった保育料の額は、03年度が約6131万円、04年度約5565万円、05年度約4813万円。徐々に減ってはいるが、毎年5千万円ほどが回収不能になっているという。

http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000000703090004