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2007年03月09日(金) 00時00分

領収書不要 旅行批判も朝日新聞

 ギリシャの遺跡、フランスの古城、ブラジルのコーヒー農園——。県議の「海外行政調査」の訪問先の一例だ。

 海外行政調査では、県議会事務局によると、県議一人あたり110万円までが公費でまかなわれるという。議長に提出する報告書には領収書の添付義務はない。

 1回の視察で、国際交流や少子高齢化対策、農業など、複数の調査テーマが盛り込まれることが多い。県議は視察後、報告書を作成するが、中には、紀行文に終始しているケースもある。

 「見識を深めるという目的で海外へ調査にいくなら、議員が自腹でやればいい」。若手県議の一人は、こう話す。

 この県議は、05年10月に海外行政調査に参加した。ベテラン県議の中には、視察を「(議会活動に対する)ごほうび」のようにとらえる人もいたという。「議員の調査権の行使としては必要だと思うが、目的をはっきりさせる必要がある」と、この若手県議は話す。

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 これまで、海外行政調査に対して外部からの批判がなかったわけではない。05年3月、県の包括外部監査結果で、「視察期間や訪問先を検討する必要がある」と指摘された。だが当時、共産、公明両党の県議が参加を見合わせていただけで、見直しに向けた具体的な動きは起こらなかった。

 今年になって、県民連合は、海外行政調査を検討課題の一つに同会派として初めて掲げた。渡部譲幹事長は「常任委員会が別に海外調査を行っており、政務調査費で肩代わりする方法もある。改選期に議論することになる」とする。

 最大会派の自民党では内容などの検討は必要としながらも、「県議が見聞を広げるという意義がある。井の中の蛙になってはいけない」(吉田弘幹事長)との姿勢だ。

 全国ではどうか。「県議の海外調査が社会的な話題となったため全国的状況を調べた」とする滋賀県の県議会事務局の調査によると、03年度の実績では、47都道府県のうち、30都道府県で公費を使って海外行政調査を実施し、12府県では実施していなかった(5県は不明と回答)という。

 このうち3県で、地方議員の研究調査費として支給される政務調査費を使っていた。公費の支出が目立ったのは、県議26人が参加した愛知県で約2890万円だった。

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 一方、市町村議会の海外視察は、財政状況などによって実施状況が異なっている。多くの市議会では、全国市議会議長会や東北市議会議長会、県市議会議長会などの企画に便乗する形で、海外視察を実施している。

 郡山市議会では、昨年9月27日から10日間、全国市議会議長会主催の都市行政調査に2市議が参加した。行き先はオーストラリアとニュージーランド。自然環境保護をテーマに、ブルーマウンテンズ国立公園を訪問するなど8項目にわたって調査を実施。約148万円の公費を使った。

 同市議会では01年3月の議会改革特別委で「市の将来的な施策を展開する上で必要で、積極的に参加すべきだ」との答申を受け、現在も、その方針を変えていない。

 いわき市議会では、議長会主催の調査への参加は05年度以降、見合わせているが、友好都市の中国・撫順市への訪問は続けている。

 福島県市民オンブズマン代表の広田次男弁護士は「見識を深めるための海外視察は必要ない。日程に『視察』を盛り込んではいるものの、実態は観光旅行だ。インターネットで情報収集できる時代、わざわざ外国に行く必要は全くない」としている。

http://mytown.asahi.com/fukushima/news.php?k_id=07000000703090004