記事登録
2007年03月09日(金) 00時00分

政務調査費、支給全市町村で領収書必要に朝日新聞

 議員の研究調査費として、議員報酬とは別に支払われる政務調査費。06年度は県内44市町村のうち29市町村で支給されているが、07年度以降は支給されるすべての市町村で領収書の添付が必要になることが、朝日新聞の調べでわかった。「第2の報酬」とも指摘される政務調査費だが、統一地方選を控え、その在り方が問われている。

◆水戸市、第三者審査会も
 これまで政務調査費の領収書添付の必要がなかった水戸市議会では、開会中の3月定例会最終日の16日に、07年度から領収書の添付を義務づける条例改正案を議員提案する。

 領収書の添付義務が遅れた理由について、保守系のベテラン市議は「県議会の動向に合わせるのが基本だから」と説明。別の市議は「これまで目が向かなかったところもある。ほかの議会で不適切な使い方が問題になり、考え直そうということになった」と話す。

 さらに改正案では、同費の使途をチェックする第三者機関の「審査会」を設置できる条項も加える。審査会には弁護士などが入ることを想定しているが、県内では同費の使い道をチェックするこういった第三者機関はなかった。

 小松崎常則議長は、これまで政務調査費が、使途基準とは異なった使われ方をされていた可能性があることを指摘したうえで、「今後は使途基準を明確にして、透明化を図っていきたい」としている。

 つくばみらい市は昨年6月の全員協議会で、06年度からの領収書の添付を申し合わせた。だが、各地で同費の不適切な使い道が明らかになったことを受けて、豊島葵議長は「政務調査費の使い方を見直す必要がある」として、今月中旬に開かれる予定の協議会で「当分の間は支給凍結」を提案する方針だ。「額が多い少ないではなく、内容を検討し、使途基準を明確にしたい」と話す。

 大洗町は2月に開かれた全員協議会で、06年度から同費の収支報告書に領収書を添付することを申し合わせた。同町の山戸杲(たかし)議長は「報道などで大洗町が遅れていることがわかり、正確に使われていることを証明する必要があると判断した」と説明する。

 一方、那珂市は、領収書が添付された収支報告書について、市民や市内の企業、報道機関を対象に公開してきた。

 情報公開請求ではないため、閲覧の申請書を記入すれば、すぐに議員ごとに収支報告書と領収書、出張報告書などが収められた各議員のファイルを見ることができる。同様の閲覧は、かすみがうら市やつくばみらい市などでもできるが、多くの自治体では情報公開請求しなければ閲覧することはできない。

 ある市議は「報酬とは違うのだから、領収書の添付や公開は当然のこと。公開されることで、使途には気を使っている」と話す。

◆県議は1人年360万円、実態不明
 市町村議会と比べて、政務調査費の支給額が大きく、実態が不透明なのが県議会だ。

 議員1人あたりの支給額年間360万円は水戸市議会の3倍以上。年間2億3400万円が当初予算に毎年計上されている。使い道については、会派ごとに収支報告書を1枚提出するだけで、領収書の添付義務はない。共産党は自主的に公開しているが、ほかの会派は非公開だ。

 全国市民オンブズマン連絡会議によると、茨城だけでなく全国36都府県(2月8日現在)が領収書添付を義務づけていないが、群馬県議会では4月の選挙後から1万円以上の支出は添付を義務づける見通しになるなど、各地で「添付義務化」の動きが出始めている。

 県議会最大会派の自民党県連幹部によると、今定例会で可決された議員報酬を削減する条例案とともに、政務調査費の支給額や領収書添付に「手をつける準備をしていた」という。

 しかし同党は、「市民オンブズマンいばらき」が昨年5月に政務調査費の返還をめぐって知事を相手どって起こした住民訴訟の渦中にあり、「係争中に改正すると、我々が訴えを認めたと思われる」として、今回の議員発議を見送ったという。別の幹部は「裁判が終われば、すぐにでも議論しなければいけない問題だ」としている。

◆29市町村で支給、最高は水戸の108万円
 県内44市町村のうち、条例が制定され、政務調査費が支給されているのは29市町村。

 年額でみると、水戸市が108万円と飛び抜けており、ひたちなか市と日立市が54万円、つくば市が36万円と続く。一方、いちばん少ない龍ケ崎市は5万円、下妻市や河内町など4市町は6万円で、自治体によって支給額はまちまちだ。

 水戸市議会の小松崎常則議長は「他県の県庁所在地と比べても妥当な額だと思う」と話す。

 どの自治体でも収支報告書を議長に提出することになっているが、使途基準はそれぞれの条例や規則で定められており、例えば、水戸市では「研究研修費」「調査旅費」「資料作成費」など8科目に分かれている。

 政務調査費の収支報告書への領収書の添付の有無は、取手市や日立市のように条例や規則で添付が義務づけられている議会もあれば、北茨城市などのように添付が慣例化されている議会もあり、議会によって異なる。ほとんどの議会で支出した金額に関係なく領収書は添付されるが、添付義務が条例化されていない下妻市は「領収書添付は8割くらいで、すべてではない」としている。

◆日大法学部の岩井奉信教授(政治学)の話
 政務調査費の収支報告書に領収書を添付することは公費を使っている観点から見れば当然のこと。重要なのは、その収支報告書が議会内だけでなく、誰でもチェックできるような制度になっているかどうかだ。それによって、使い道も明らかになり、抑止力にもつながる。東京都では出納帳をインターネットで公開しようとしている区もあり、自治体によって対応の仕方に差がある。

◆政務調査費=政策の調査研究にかかる経費で、自治体から議会の議員や会派に支給される。01年施行の地方自治法改正で制度化された。それぞれの自治体によって、支給額や、領収書添付の有無の扱いは異なる。

http://mytown.asahi.com/ibaraki/news.php?k_id=08000000703090005