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2007年03月09日(金) 00時00分

オットセイの「しんちゃん」、元気でね朝日新聞

 なごり惜しそうな別れの場面だった。埼玉県川越市の水田で昨年9月に保護されたキタオットセイ「しんちゃん」が、鴨川市の水族館「鴨川シーワールド」で野生化のためのリハビリを受けて約3カ月。しんちゃんは8日、銚子沖の太平洋で海に放たれた=写真。しかし、すぐには姿を消さず、船の周囲を泳ぎまわった。

 同館は1993年以降、保護したキタオットセイを3回放流しているが、いずれも海岸で見つかったり、人が内陸に運んで放したりしたと思われるケースだった。しんちゃんは、川伝いに内陸まで入り込んだと見られており、全国でもあまり例がないという。東京・上野動物園の動物病院で治療を受けた後、同館に移されていた。

 リハビリのメニューには「えさを取ること」も盛り込まれた。2月中旬から、素早く泳ぐ生きたアジをプールに放ち、しんちゃんに食べさせた。てこずる姿に、「こんなことで海に帰して大丈夫だろうか」と世話係の同館海獣2課の中野良昭マネジャーを心配させたが、ようやくこの日を迎えた。

 出発前日は放流に備えて食事抜きだったが、前々日はアジとイカ計4キロを平らげた。

 8日、ケージに入れられて同館から銚子市の銚子マリーナに運ばれたしんちゃんは、今度は船に。船はキタオットセイの群れを2時間半以上かけて探したが、見つからず、銚子の東沖約17キロでケージの扉が開かれた。 船の近くを泳ぎ回り、勢いよくジャンプ。周りをしばらく離れようとはしない様子に、同館の村松政二さんも、目を細めていた。

 キタオットセイの群れはこの時期、北太平洋から南下してくるという。同館は2月中旬、銚子沖でキタオットセイを確認できたことから、野生にかえす好機と判断したという。

http://mytown.asahi.com/chiba/news.php?k_id=12000000703090003