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2007年03月09日(金) 00時00分

式根島の染色、今に 稲城の江原さん朝日新聞

 東京都稲城市平尾の江原音子さん(75)が、伊豆諸島・式根島に伝わる素朴な草木染に打ち込んでいる。郷里の伝統を残そうと始めて20年。身近な植物で時間をかけて染め上げたサンプルは2千種類に達した。稲城の植物を染料にした布などを集め、9日から市内で展示会を開く。(永沼仁)

 江原さんは式根島の出身。子ども時代、伊勢エビ漁に使う網をモッコクの樹皮で染める作業を手伝い、染色の技を身につけた。しかし、戦後に化学染料が広まり、伝統の技は途絶えた。

 「島に伝わる染めの技を残したい」。そう思いついたのは20年ほど前。35年前に転居した稲城市と式根島とを往復しながら、昔ながらの方法で染色を始めた。

 材料は身近な植物。畑で育てた作物の実や根、知人が摘んできた花や草など、なんでも煮る。それぞれを煮詰めた液に、白い絹布を1、2日つけ込み、天日にさらして乾かす。

 作業をその季節に20〜30回ほど繰り返し、3年かけて色落ちしない状態に定着させる。色止め剤を使えば早く染め上がるが、植物だけの染めにこだわる。植物の持っている自然の色をそのまま引き出したいからだ。

 どんな色が出るのか、やってみないと分からない。驚いたのは「アシタバ」だ。冬にも緑を保つ草だが、季節によって染め上がりが変わった。1、2月にやさしい黄色だったものが、5月には色が濃くなり、秋になると茶色にあせてくる。人間の一生のように感じたという。

 展覧会では、稲城の植物で染め上げた約150種の布や着物を並べる。特産のブドウの皮で染めた薄桃色、クリのいがを使った明るい茶色など、会場を「稲城の色」で彩る。

 江原さんは「同じ色は一つもありません。式根と稲城でも違う。まだ出していない真っ赤にも挑戦したいし、十二単衣もつくりたい。興味はまだまだ尽きません」と話す。

 展覧会は稲城市向陽台の城山体験学習館で、25日まで。午前9時〜午後8時。入場無料。問い合わせは同館(042・378・7100)へ。

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