記事登録
2007年03月09日(金) 00時00分

東京大空襲から62年  寛永寺で慰霊法要 慰霊碑を前に参列者にあいさつをする海老名香葉子さん=9日午前10時34分、東京都台東区の寛永寺現龍院で(千葉一成撮影) 東京新聞

 一九四五年三月十日未明の東京大空襲の犠牲者を悼み、東京・上野に建立された二基の慰霊碑前でエッセイストの海老名香葉子(かよこ)さん(73)らが九日、法要と式典「時忘れじの集い」を営んだ。

 法要は寛永寺現龍院にある碑「哀しみの東京大空襲」前で営まれ、遺族や地元関係者らが手を合わせたり、焼香するなどして犠牲者を悼んだ。

 その後、上野公園内の母子像「時忘れじの塔」前で式典を開催。空襲を語り継ぐ活動をしている若者グループ「P魂s(ピーソウルズ)」が、大空襲で家族六人を失った海老名さんの幼少時の体験を語り「戦争を過去のこととせず、体験者と同じ思いを持ち、心の真ん中に置いておきたい」と平和への思いを引き継いでいくことを誓った。都立竹台高校吹奏楽部の生徒も参加した。

 慰霊碑は、地元の台東区在住の海老名さんらが一昨年建てた。

 海老名さんは「大勢の人が慰霊碑に集い、小さな子も手を合わせてくれている。炎の中で亡くなった十万人が見守ってくれていると思うと、胸が熱くなる」とあいさつした。海老名さんの長男林家正蔵さんと二男いっ平さんも出席した。

 東京大空襲は、米軍のB29爆撃機約三百機が現在の東京都江東区、台東区、墨田区などの下町を中心に焼夷(しょうい)弾による無差別爆撃。十万人以上が死亡し、百万人以上が家を失った。

■謝罪、国賠求め提訴遺族ら112人

 東京大空襲で被害を受けた負傷者や遺族ら百十二人が九日午後、国に総額十二億三千二百万円の損害賠償と謝罪を求める訴訟を東京地裁に起こす。空襲被害で国の責任を問う集団訴訟は初めてとなる。

 東京を中心に二十都道府県の五十六歳から八十八歳の人たちが原告となった。弁護団には全国から弁護士百十人が参加している。

 訴状では「政府は軍人軍属とその遺族には戦後補償をしているのに、民間人犠牲者に対しては援助をしなかった。戦争被害は等しく国民が受忍するとの論理を民間人にだけ適用するのは、憲法で定められた法の下の平等に反しており、国が被害者を放置した責任は重い」としている。

 原告らは「戦争を風化させないために、戦後六十二年にして集団提訴に踏み切る。被害者を救済しないという不法行為は現在も続いており、民法上の賠償請求権の時効(二十年)は成立しない」と主張。

 「裁判で犠牲者一人ひとりの凄惨(せいさん)な体験を語ることで、前線と同じように戦場となった国内の被害を明らかにしたい」としている。

 さらに「空襲が起きたのは、日本政府が戦争を開始し、中国・重慶で無差別爆撃を行った上、戦争終結を遅らせたことが原因だ」として政府の責任を追及する。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070309/eve_____sya_____007.shtml