【近著対決】
都知事選出馬のタイミングに合わせたのかと勘ぐりたくなるのは浅野氏。2月下旬に『許される嘘(うそ)、許されない嘘』(講談社)を出版した。
浅野氏は「知事となってからは、ことばが勝負という毎日であった」と記しており、“政治家”として漢字や方言など「ことば」というものに真正面から向き合った1冊だ。
迎え撃つ石原知事は昨年11月、自ら企画・監修した『もう、税金の無駄遣いは許さない!』(ワック)を出版している。
都が取り組んだ会計制度改革をまとめたもので、「就任以来手掛けてきた改革の中でも、最も本質的な改革」と、これまた3選出馬をにらんだかのように、改革の成果を強調している。
【強みは…】
浅野氏が宮城県知事時代に力を入れたのは何といっても福祉政策だ。同県を全国屈指の“福祉県”にした実績をひっさげての都知事選出馬。厚生省時代に障害福祉課長を経験しただけあり、障害者福祉に対する思い入れは強い。
昨年5月に発行した『疾走12年 アサノ知事の改革白書』(岩波書店)には、障害者福祉について「一生の仕事に値する大事なもの」「人間存在とは何か、人間は何のために生きているのかということを突き詰めていくことにつながる」と熱く訴えている。
一方の石原知事は「国に対してモノ申す」という姿勢を強烈に示して都政を牽引(けんいん)。「国の怠慢」をあぶり出すことが存在意義につながってる面も強く、大気汚染解消を目指したディーゼル車の排ガス規制を実現するとともに、米軍横田基地の官民共用化などを訴えてきた。
最近、特に強調している花粉症対策についても、石原知事は昨年4月に出した『日本よ、再び』(産経新聞社)の中で、「国家の林業に関する失政の所産でしかない」「政府はなぜこの問題に積極的に対応してこなかったのか理解に苦しむ」と断罪する。
【共通するのは…】
2人に共通するのは官僚への批判だ。
浅野氏は1999年1月に出した共著『政治の出番』(日本経済新聞社)の中で、あるべき政治の姿について、「官僚に引きずられてきたような政治から、官僚を凌駕(りょうが)し、逆に官僚を引っ張っていく政治。それが私の言う『出番』の意味です」と指摘。
石原知事は前述した『日本よ、再び』で、官僚制度について「この国の政治を一元的で幅の狭い融通のきかぬものに仕立ててしまっている」、「国民に多大な損失を一方的にかぶせる体たらく」と一刀両断している。
【首都移転の賛否】
決定的に考え方が異なるのは首都移転問題。石原知事は言わずとしれた反対論者。
これに対し、浅野氏は賛成論者で、2002年2月発行の共著『石原慎太郎の東京発日本改造計画』(学陽書房・人物文庫)で、「石原都知事の首都機能移転反対論には、被害者意識が見え隠れする。首都でなくなったら東京の魅力は大きく減じるとか、首都である東京であるからこそ都知事になりたかったのだとか。そんなことはない」と真正面からケンカを売っている。
タイプの違うこの2人。都民はどう判断するのか…。
ZAKZAK 2007/03/09