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2007年03月09日(金) 13時33分

東京大空襲、国を提訴 被災者ら112人朝日新聞

 62年前、一夜のうちに約10万人の命が奪われたとされる東京大空襲の被災者や遺族112人が、国に総額12億3200万円の損害賠償と謝罪を求める集団訴訟を9日、東京地裁に起こした。空襲被害を受けた民間人として初の集団訴訟。原告側は「民間人被害者に何も援助をせず、切り捨て放置した国の責任を問う」として、国家補償が整備された旧軍人・軍属と一般戦災者との格差の是非を問い直す。遺族を含めた原告の平均年齢は74歳で、最高齢は88歳。

提訴のため東京地裁に入る、東京大空襲の遺族や被災者ら=9日午後0時59分、東京・霞が関で

 原告側は「東京大空襲が国際法違反の無差別爆撃だったことを裁判所に認めさせ、戦争を始めた政府の責任を追及したい」として、旧日本軍が中国・重慶で繰り返した爆撃などが米軍の作戦に影響を与えた点についても責任を明確にしたい考えだ。一般戦災者への補償や死亡者の追跡調査、追悼施設建設も求める。

 戦傷病者戦没者遺族等援護法は、軍人・軍属で障害を負った人やその遺族に年金を支給するよう定めている。同法を一般戦災者にも適用しないのは違法として、名古屋空襲の被災者2人が国家賠償を求めた訴訟は、最高裁で87年に敗訴が確定。一、二審判決は「援護法の趣旨は国の使用者責任で補償すること。民間被災者との差別には合理的理由がある」とした。

 中山武敏弁護団長は「空襲については被害者すべてを救済するのが世界の『人権水準』。一般戦災者を切り捨てた国による差別が今も続く苦しみを耐え難いものにしている」と訴えている。

http://www.asahi.com/national/update/0309/TKY200703090210.html