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2007年03月08日(木) 00時00分

まるで生演奏! 315万円の音色を実際に聴いてみたZAKZAK

ケタ外れスピーカー、パイオニアが発売

 【クリアな音】

 「強化費をいくら使ってもいいから金メダルを取れといわれているようなもの。コストは考えなくてもいいけれど、逆にいい音を作らなければいけないというプレッシャーがありました」

 同社のスピーカー技術部の高橋俊一マネジャーはこう振り返った。1本315万円のスピーカー「TAD Reference One」の設計責任者だ。

 同社内の施設で、女性ボーカル(ロバータ・ガンバリーニ「煙が目にしみる」)、男声ボーカル(タイム・ファイブ「夜空の向こうに」)、クラシック(マーラー「交響曲第3番」、小林研一郎指揮)の3パターンを試聴した。

 それぞれの声や楽器の音が非常にクリアに聞こえてくる。それでいながら、オーケストラ全体としての響きもきれいで、まるで目の前で演奏してもらっているような感覚になる。

 こうした音を実現しているのは、ベリリウムと呼ばれるレアメタル(存在量が少ない金属)を使った振動板。ベリリウムは軽くて強度があるといった特徴があり、これにより「原音に忠実な再生ができる」(高橋さん)のだそうだ。

 このほか、キャビネット(箱の部分)にもこだわった。最上級の家具や楽器の素材として使われているアフリカ産の天然木「ポメラサペリ」を使用し、職人が手作業で磨き上げている。

 「車の性能を良くするには、エンジンだけが良くてもダメ。スピーカーも同じで、スピーカーユニット、キャビネットなどそれぞれバランスをとりながら性能を上げていかなくてはいけません」(同)

 【購入者は?】

 音はどこまでも澄み切ってクリアだが、とにかく値段が値段だけに購入者が気になるところ。すでに問い合わせが何件かきているが、主なターゲットは「オーディオマニアよりさらに一段上のユーザーである中高年の富裕層」(スピーカー企画課副参事の田中博さん)という。

 年間の出荷本数は全世界で100本で、うち日本国内は半分ほどとみている。「1本150万円程度のスピーカーなら、オーディオ好きのサラリーマンらの層にそこそこ大きな市場があるが、その倍となると、限られた市場になる」(同)

 確かにスピーカー2本で630万円となると、アンプやCDプレーヤーなどにもそれなりにお金をかける必要があるだろう。また、このスピーカーは1本約150キロもの重さがあるから、床の強度も問題になる。

 ちなみに、パイオニアで試聴の際に使ったオーディオ機器は、メーンアンプ約120万円、パワーアンプ約300万円、CDプレーヤー約130万円。これにスピーカー2本で計約1180万円ナリという、ため息が出るような値段だった。

ZAKZAK 2007/03/08

http://www.zakzak.co.jp/top/2007_03/t2007030802.html