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2007年03月08日(木) 00時00分

保育所熱中症死亡事故 両親ら上尾市を提訴朝日新聞

◇捜索の注意義務など問う

 上尾市の市立保育所で同市の会社員榎本高志さん(44)の長男の侑人(ゆうと)ちゃん(当時4)が熱中症で死亡した事故で、両親らが7日、上尾市に約8500万円の損害賠償を求める訴訟をさいたま地裁に起こした。

 提訴したのは、侑人ちゃんの両親と祖母2人の計4人。

 訴状などによると、(1)担任保育士が侑人ちゃんの動静を1時間にわたり把握していなかった(2)侑人ちゃんを捜すときも、一緒に遊んでいた園児から事情を聴くことをしていなかった、などと指摘。市側は園児の動静を把握する義務や園児を捜す上での注意義務を怠っているとした。

 提訴後、両親は県庁で記者会見を開いた。この日は侑人ちゃんの誕生日で、両親は「生きていたら、今年4月に小学校に上がる年齢。入学する侑人を見られなくてすごく悔しい」と心境を語った。

 父親の高志さんは「これだけの重大事故でも、たまたま起きた事故だと思っている人がいる」と言及。「当事者のどこにどういう責任があるのか、市は説明責任を果たしていない」と怒りをあらわにした。

 母親の八千代さん(39)は「安心して預けている保育所でどうして侑人が死ぬことになったのか知りたい」と強い口調で話した。

 訴えを受けて、上尾市の新井弘治市長は「訴状が届いていないので、コメントは控える。今後は真摯(しんし)に対応したい」と談話を発表した。

 侑人ちゃんは05年8月10日午後0時半ごろ、市立上尾保育所の廊下にあった本棚の中で心肺停止の状態で見つかり、病院に搬送されたが熱中症で死亡した。事故当時の保育所長と担任保育士2人=いずれも退職=は、昨年10月に業務上過失致死容疑で書類送検されている。

http://mytown.asahi.com/saitama/news.php?k_id=11000000703080001