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2007年03月08日(木) 00時00分

検証県議会(上) 議論乏しく演説多く朝日新聞

 2月21日午前の県議会本会議場。同僚議員から激励の拍手を受けながら、自民党県連政調会長の斎藤万祐議員(68)が代表質問をするため、議長席前の演壇に登った。
 原稿用紙を読みながら約46分、財政、市町村合併、いじめ対策など多岐にわたって質問した。堂本知事らの答弁後、自席から約4分、再びただした。再度の答弁をはさんだ三度目は、質問ではなく要望だった。持ち時間60分のうち約10分を残して質問を終えた。
 県議会は内部の申し合わせで、県側の答弁を受けた後の再質問、さらに再度の答弁後の再々質問までを認めている。しかし、この機会を最大限に使う議員は少ない。
 今回の2月県議会の代表質問と一般質問で質問したのは16議員。県議会事務局によると、最初の質問(要望だけの場合は除く)だけで終えたのは、いずれも自民党の川名寛章(61)、田中宗隆(63)、山中操(56)、伊藤勲(66)の4議員。逆に、再々質問までしたのは代表質問に立った民主党の田中信行議員(55)だけだったという。
 県議会は本来、県が提案する議案を慎重に審査し、疑問点があれば鋭く追及する場だ。北海道夕張市が財政再建団体に指定されたのを受け、行政の監視役としての議会の責務があらためて重要視されている。
 「(県議からは)すべてのシナリオを(代表・一般質問の)事前に出してもらっていることが多いですよ」
 昨年8月の補選で初当選した民主党の軍司俊紀議員(41)は今回が初の一般質問だった。それを終えた後、県職員にそう言われて驚いた。
 多くの議員が県議会で読み上げる原稿を事前に県側に提出し、引き換えに県が答える答弁内容を事前に開示してもらう。これに基づく再質問の原稿も事前に県側に示しているというのだ。
 自らは印西市議時代、質問の詳細までは市側に伝えず、手元にメモを用意して臨んだという。「これでは儀礼的だ」
 地元の県道整備の進捗(しん・ちょく)状況と今後の見通しをただす議員もいた。「本会議でなくても、県議が県の担当部・課長に聞けばすぐに分かる内容だった」。同僚の若手議員でさえ首をかしげた。
 しばしば県議会を傍聴するというNPO法人理事の女性(56)は「鋭い突っ込みが少なく、演説して終わっているケースが多い。十分に政策論争しているとは思えない。だから、県議会が県民から遠い存在になっている」と勉強不足ぶりを判する。
 議論に乏しい静かな議会は、情報発信力に乏しい。議論が増えれば、県民の関心は集まるはずだ、と指摘する。
 東国原英夫宮崎県知事は、初めて臨んだ県議会で、事前のすりあわせなしで、議員と論戦を交わした。満員に近い傍聴人は質疑を凝視した。
 同知事はその中で「生き生きとした議論がなされるべきだ」として、質疑応答を一問一答方式に切り替えてはどうかと議会側に投げかけた。
 宮城、栃木、京都など9府県議会では一問一答方式が導入されている(06年9月現在)。テーマごとに議論を深めやすい方式とされる。
 千葉の場合、予算委員会にこの方式を採り入れる。だが、代表・一般質問は、議員が全質問をしてから、知事らがまとめて答える「一括質問方式」を採っている。
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 統一地方選の前半選挙にあたる県議選の告示(30日)が約3週間後に迫ってきた(政令指定市・千葉市議選も同一日程)。約495万人の有権者が票を投じる。直前の2月定例県議会では選挙を意識した質問・行動も目についた。この4年、県民が託した思いは議員を通じて確実に届いていたのか。県議会を検証する。

http://mytown.asahi.com/chiba/news.php?k_id=12000000703080003